プライベート・レーベルは、商品パッケージのデザインやロゴを変えることでオリジナルブランドを作る手法。大きな捉え方として「レーベル」は「ブランド」よりも手軽に立ち上げられるオリジナル商品という印象が強く、その名が示す通り、品名ラベルを自店用に貼り替えただけのレーベル商品も広く普及している。 (JNEWSについてトップページ
プライベートレーベルから始めるショップのブランド構築

JNEWS
JNEWS会員配信日 2004/3/1
記事加筆 2021/9/11

 音楽業界では、有名アーティストやプロデューサーが「自分のレーベルを立ち上げてCDをリリースする」という話をよく耳にする。「レーベル」とはもともとレコード盤に貼り付けられていたラベルのことを指し、レコード会社のブランド価値を高める役割を果たしていた。

ところが現在の「レーベル」とは、レコード会社そのものを表すのではなく、レコード会社の中で細分化された一つのブランドとしての役割を果たしている。消費者の音楽性が多様化していく中では、大きなレコード会社が一つのブランドイメージだけで多様なCDを販売することが難しい。そこでジャンル毎に、その分野を牽引するリーダー的アーティストをレーベル・オーナーとして、独自のブランドイメージを作り出している。そのためCDを製作するメーカー工場は一つでも、複数のレーベルが存在していることになる。

レコード業界におけるこのブランド戦略は、他の業界にも応用が効くものとして着目してみたい。特にオンライン上の小売業では、他店にはない優れたオリジナル商品を持つことが生き残りの鍵となっているが、自店が「商品の製造者(メーカー)」となってオリジナル商品を作ることは負担が大きい。しかし他の業者が製造した商品の中からでも、自分の目利きに叶ったものが見つけられれば、それを「自社レーベル」として売り出すという方法だ。

このような商品は「プライベート・レーベル」といわれ、米国では「プライベート・ブランド商品(PB商品)」と同義語として扱われることも多い。しかし大きな捉え方として「レーベル」は「ブランド」よりも手軽に立ち上げられるオリジナル商品という印象が強く、その名が示す通り、品名ラベルを自店用に貼り替えただけのレーベル商品というのも、実際には広く普及している。

【ワインにみるラベルの価値とプライベート・レーベル】

 オンラインショッピングの売れ筋ランキングでも「ワイン」は常に人気のある商材として定着しているが、熱心なワインファンの中には、自分が飲み終えたワインのラベルをコレクションしている人達も多い。

ワインラベルのコレクションは世界的にも高貴な趣味として認められていて、有名ワインのラベルを集めた図鑑も販売されているほど。国内でもワインラベルをボトルから剥がしてコレクションするための保存シートや、バインダーが隠れた人気商品として売れている。

それだけ「ワインのラベル」には特別な意味や価値が込められているわけだが、そこにフォーカスしたワインビジネスもある。米国カリフォルニア州にあるグローバル・アペレイション社が運営するワインサイト「winelabel.com」では、顧客のニーズに応じてラベルをパーソナライズ化したワインを製作~販売している。

例えば、結婚式のギフト用としてカップルの名前や写真、結婚式の日付が入ったワインや、会社向けのギフトとして社名の入ったワインなど、様々な用途に適したオリジナルのラベルがデザインされて、ボトルに貼られる形でプライベートワインが完成する。パーソナライズできるのは、ワインの種類、ラベルのデザイン、ボトルの加工という三項目。ワインの種類としては「メルロー」「カベルネ・ソーヴィニヨン」「シャルドネ」「スパークリング」などが用意されていて、用途や好みにあったものを選ぶ。次に多種類のデザインが用意されているラベルの見本から好きなものを選ぶか、約25ドルで提供される専用のソフトウエアで自分(自社)だけのラベルをデザインすることができる。

これだけで足りなければ、ボトル本体にエッチング加工をする方法でメッセージや名前、社名などを彫り込むことも可能だ。価格はパーソナライズの内容によっても異なるが、1本40ドル程度からオーダーでき、注文本数が多いほど1本あたりの単価は安くなる。

《結婚式用プライベートワインの製作価格例》

また、同社ではレストラン業者向けに本格的なプライベートワインの製作も請け負っている。レストランではメニューの中に自店専用のワインを加えることによって、他店にはない特別な魅力作りができるようになる。

《ワインがパーソナライズされる工程》

ここでプライベート・レーベル商品の特徴として押さえておきたいのは、各クライアント毎にパーソナライズする項目として重視されるのは、商品の中身よりも商品パッケージにあるという点だ。winelabel.com のケースでは、ワインの中身としての選択肢は5種類しかなく、あとはラベルとボトルのデザインによって商品のパーソナライズがされている。これだけの工夫でも“他にはないオリジナル商品”としての効果は大きく、ギフトとして受け取った人の喜びは大きい。

【国内にも広がるプライベートワインの需要】

 プライベートワインに対する需要は海外だけでなく国内にもある。昨今のワインブームを受けて、レストランやホテルがオリジナルワインを企画したり、各種のパーティでも主催者オリジナルのラベルが貼られたプライベートワインは引き出物として人気が高い。

日本ではブドウ産地として有名な甲府地方を中心にワイン製造業者が数百社存在しているが、その多くは中小零細規模の業者である。国内で収穫されるブドウの量には限りがあるため、ワイン製造業というのはもともと大量生産には向かない。そこで規模の小さな製造業者は、ブドウの品種、生産地の気候、ワインの醸造技術などで、商品の付加価値を高めていく必要がある。

しかし国産ワインの人気は、フランス等から輸入される有名ブランドに押され気味で、中小業者が製品のブランド価値を自力で高めていくことが、なかなか難しいという悩みを抱えている。しかし品質面では各業者ともにかなりの自信を持っている。大手メーカーが製造する安価なワインの中には、海外から加工済みのブドウ果汁を輸入し、それを国内の工場で醸造、製造したものを販売しているケースも多いため、生のブドウを原料とするより、どうしても品質面で劣るという。
また価格面に関しては、輸入ワインには関税がかかるために国産品のほうが有利だ。

そこで、これら国内産のワインに着目して、主にギフト向けや企業のノベルティ用としてプライベートワインを企画するビジネスを考えてみるもの有意義だろう。ホテルやレストランなどをターゲットにした業務用プライベートワインの企画を手掛ける業者は、既に国内でも何社か存在している。ただしオンラインショップなどが、自店のオリジナル商品としてプライベートワインを販売するには、酒販免許を取得する必要がある。

《プライベートワインの企画~販売事業》

【健康食品業界のプライベート・レーベル】

 オンライン販売におけるもう一つの売れ筋として急成長しているのが「健康食品」であるが、こちらも様々なレーベル商品が登場している。テレビ番組が火付け役となった健康ブームにより、大小が入り混じって健康食品を扱う業者が急増しているが、その多くは異業種からの参入組で、独自の研究開発や製造の部門を持たずに海外業者やOEMメーカーから商材を調達する形で“オリジナル商品”を作り上げている。そもそも健康食品は“医薬品”とは異なり、厚生労働省の認可などを取得する必要がないため、事業の立ち上げは比較的容易におこなわれている。そのため一口で「健康食品」といっても、商品の内容は玉石混交となっているのが実態でもある。

手っ取り早くこの分野のビジネスを手掛ている業者では、海外から粉末またはサプリメント状の健康食品を輸入し、日本国内で容器とラベルのみを製作する流れで商品化している。中身は他の商品と同じでも、新たにラベルを作り直せば、異なる価格帯の“新しい商品”として成立してしまうのがこの業界の裏の部分と言えるかもしれない。

もちろん海外から輸入される健康食品がすべて粗悪というわけではない。プロの業者が本当に良いと確信できる商品を海外から発掘し、現地のメーカーと交渉して輸入されているものも数多い。ただし日本の消費者向けに販売するためには、商品の中身だけで勝負するのではなく、容器とラベルのデザインにも気を配らないと成功しない、というのが業界内では定説だ。「健康食品」には具体的な効能を明記してはいけないという規制があり、商品力を明確に表現できないために、その外観(パッケージ)から健康に良さそうな印象を与えることが重要になってくる。

【オンラインショップとしてのレーベル商品開発】

「プライベートレーベル商品」というと以前は、中小の小売店が企画した商品で品質面では大手メーカー品に劣るという印象を抱くこともあったが、現在では製造技術の向上とOEM(相手先ブランド製造)の体制が整ってきたことから、品質上の差はほとんどない。それよりも「人とは違うものが欲しい」という消費者が増えてきたことから、同一メーカーの製品でも、カリスマ的な支持を受けるショップが細部の仕様にこだわってメーカーにオーダーした商品を限定販売すると、短時間で完売してしまうケースも増えてきている。しかもこれは“他では買えない商品”であるため、一般的な量産品のように価格競争の中に飲み込まれてしまう心配も少ない。

一方、プライベートレーベル商品の欠点として、ショップ(小売店)側がメーカーに発注した商品はすべて買取りとなるため、販売の見込みを誤ると過剰な在庫を抱えてしまうリスクがある。しかしオンラインショップの場合では、SNSやメルマガによる顧客の組織化が進んでいるため、顧客から要望の多い商品を先にヒアリングして、そのニーズに沿ったプライベートレーベルの企画をして数量限定の予約を受け付け、メーカー側に発注をするという方式で“売れ残り”のリスクを解消することができる。

このように完成したレーベル商品は、ショップの完全なオリジナル商品とは異なるが、商品のブランド名(レーベル)や細部の仕様が異なれば、消費者はその価値を認めてくれる。OEM製品といえば、従来は数千、数万以上のロットがなければメーカー側が取引きに応じてくれなかったものだが、製造業界では機械の性能が向上して少量生産が可能になったことと、海外工場との競争が厳しくなってきたことによって、小さなロットでのオーダーにも対応するようになってきている。例えば、中小の化粧品OEMメーカーでは、数十個というオーダーからでも生産に応じてもらえる。

この内容はJNEWS会員レポートの一部です。正式会員の登録をすることで詳細レポートにアクセスすることができます記事一覧 / JNEWSについて

この記事に関連したJNEWSレポート
プライベートブランドを柱とした小売業界の再編トレンド
アマゾン販売データを活用したプライベートブランド開発
ドラッグストアが開拓するPB商品とフェミニンケア市場

この記事の完全レポート
JNEWS LETTER 2004.3.1
※アクセスには正式登録後のID、PASSWORDが必要です。
※JNEWS会員のPASSWORD確認はこちらへ


(儲かる商売の裏側)/(トップページ)/(JNEWSについて)/(Facebookページ)

これは正式会員向けJNEWS LETTER(2004年3月)に掲載された記事の一部です。 JNEWSでは、電子メールを媒体としたニューズレター(JNEWS LETTER)での有料による情報提供をメインの活動としています。 JNEWSが発信する情報を深く知りたい人のために2週間の無料お試し登録を用意していますので下のフォームからお申し込みください。

JNEWS LETTER 2週間無料体験購読

配信先メールアドレス

※Gmail、Yahooメール、スマホアドレスの登録も可
無料体験の登録でJNEWS LETTER正式版のサンプルが届きます。
 
Page top icon