起業家のための成功法則
  
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  近年の独立希望者にみる起業のスタイルは、20代、30代、40代以降と世代別に大きく異なっているのが特徴。その違いを把握することによって、現代人のビジネス(仕事)に対する価値観が見えてくる。
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世代別に異なる起業に対する価値観と
ワークスタイルの選択方法
written in 2005/12/10

 昨年までと今年の独立開業の傾向を見てみると、そこには大きな変化が生じていることがわかる。ネット起業のブームが巻き起こった1995年頃と現在とでは、ビジネスを立ち上げるための環境やコスト、お手本とする目標が変化しているため、それが起業の方法やスタイルにも反映されてくるのは当然のこと。十年前の起業は、まだ誰も叶えていない夢に向けてゼロからベンチャー企業を立ち上げることが起業家に共通した方法であったが、当時スタートしたベンチャー経営者の中から、現実に株式上場を果たしたり、会社を売却する形で億単位の資産を築いている人も多数登場している。

そんな成功者の実像を目の当たりにして、これからの独立希望者は「自分の起業」を計画することになるわけだが、これまで十年の歴史から、成功事例や失敗事例の収集には事欠かないため、それらをモデルケースとして最も自分に適した起業の方法を考えている。いまの独立希望者の中では、次のホリエモンや三木谷社長になろうという気迫の人は意外と少なく、もっと小さなリスクで効率的に高収入が得られる方法を模索している人が増えているのが特徴。

いまの起業シーンを端的に説明すると、20代、30代、40代以降と世代別にそれぞれ異なる価値観で起業を目指しているという状況だ。「このままサラリーマンを続けていくことは心許ない」「生涯にわたってサラリーマンとして働けるか不安」という傾向は各世代に共通していることだが、ではどうすれば良いのか、という具体的な行動については、世代によって差が生じている。おそらくこの差は、各世代が育ってきた時代背景や、背負っているものの違いによって現れてくるものと思われる。

若者層にみられる小賢く起業しようとする傾向

     いまの20代で起業意欲旺盛な者の中には、上場社長を目指そうとする人もいるが、それはどちらかというと少数派で、大学在学中にゼロからベンチャー企業を起こすようなケースは、ネット草創期と比べれば少ない。大きなリスクを背負い、苦労して会社を起こすより、もっと小賢く株式投資情報起業によって効率よく稼ごうとする“知能犯”が増えている。

    ある意味、これはネット起業の環境が変化(進化)していることを示している。十年前に億万長者になろうと思えば「自分で会社を起こして上場させる」という選択肢しかなかったが、いまならばアフィリエイトや情報起業で“種銭”を作り、それを元手に株式投資で増やすという方法も、若者層の中では“起業の方法”として位置付けられている。確かにこの方法で、百万円の元金を1億円に増やした大学生もいる。現代では労力をほとんど使わずに知能戦だけで大金を掴むことも不可能ではない。

    ライブドアがマスコミを賑わせて以来、「会社は誰のものか?」という議論が活発になったが、「会社は従業員でも社長のものでもなく、株主のもの」という答えが正しいのであれば、資本主義の中で上位に立つには、大学を卒業して会社に勤めることよりも、社長になることよりも、「投資家になることがベスト」という価値観に着地するわけだ。

    彼らがお手本としている現在の成功者(十年前に起業した人達)を見ても、資産を築いている急所が「経営者としての報酬」ではなく、大株主(投資家)としてのキャピタルゲインであることに気付くと、経営者になることを飛び越して投資家への憧れを抱いてしまうのも無理はない。一流大学卒業者の人気就職先が外資系の投資銀行であることと、ニートがデイトレーダーの道を目指すこととは等号で結ばれている。その是非はともかくとして、インターネット環境の充実によって資本主義の枠組みが変化しはじめていることは、若者層の起業スタイルから読み取ることができる。

“知”を活かそうとする30代の起業スタイル

     約十年間の会社勤めを経験した30代になると「働くこと」に対しての抵抗感はない。むしろ子供時代の教育で勤勉さや真面目さを身につけているのが、この世代以降の特徴でもある。ただし、会社組織の中を十年以上見てきた中で、「会社を信頼し続けられるか」という問いに対してはNOと答える人は多い。「自分もいつリストラの対象になるかわからない」という緊張感の中でサラリーマン生活を続けている。

    そこで“いざ”という時のために起業準備を進める人も増えているが、彼らが起業の武器としたいのが、自分の中にある知財である。つまり体力に依存した労働集約的な仕事ではなく、もっと知的に稼ぐための仕事の方法やワークスタイルを求める傾向が強い。知財を磨くための具体例としては、資格取得の勉強をしたりスクールに通うという方法が最も身近で一般的のようだ。

    手掛けようとする事業の規模に関しても、銀行から無理な借金をするよりも、ネットを駆使した知的SOHOとして生計を立てられることを理想としている。開業資金でいえば、自己資金の範囲で賄える「5百万円以内」というのが、一つの基準線になっている。一方、独立後の収入についてはSOHOとして年収1千万円を超すところまで到達できれば“成功”と捉えている人が多い。

    また、30代の起業者に関して特徴的なのは、収入面だけでなく、生活スタイルの理想を追求することも、会社を辞めて起業する大きな要因になっているという点。ちょうど30代は子育ての時期と重なることもあり、家庭をなおざりにしないでやりがいのある仕事を追求する人達が増えている。十年前ならば、それは「虫が良すぎる」「そんな気持ちでは独立しても成功しない」という批判が体勢を占めていたが、既に欧米ではホームオフィスを拠点として、ネットを駆使したビジネスモデルを組み立てることによって、ファミリー&ワークバランスを良好に保つことも十分に可能となっている。

ネガティブな要因が見え隠れする40代以降の起業

     そして起業(独立)希望者の数が最も多いのが40代以降の層である。国民生活金融公庫の調査(2004年)でも新規開業者の平均年齢は42.6歳となっていて、昨今の起業ブームの風とは裏腹に、意外にも1990年以降の平均開業年齢は高齢化している傾向にある。

    《平均開業年齢の推移》

    • 1990年………38.9歳
    • 1993年………39.2歳
    • 1995年………39.7歳
    • 1997年………39.6歳
    • 1999年………40.9歳
    • 2001年………41.8歳
    • 2004年………42.6歳

     ※出所:国民生活金融公庫

    この世代に人気の事業テーマとしては、小売業や飲食店、それに福祉関連サービスなどを考えている人が多い。開業資金(予算)は 500万円〜1000万円の範囲が中心になる。

    素直に考えれば、社会経験や人脈が豊富で資金的にも若年層より余裕がある40代以降ほど起業の成功率が高いように思えるが、実際にはその逆であることが多い。この世代に対する起業アドバイスでは「なせこの年齢での起業なのか?」を確かめてみる必要がある。

    もともと独立志望の人であれば、学校を卒業してから現在まで約二十年間の“準備期間”があったことになる。起業欲が旺盛な人ならばおそらく30代までに独立していることが多い。起業を考えてから行動を起こすまでの平均準備期間は2〜3年のため、40代ではじめて起業を決意するということは、30代の頃までは「このままサラリーマンでいくつもり」と考えていなかったか?そんな独立希望者の中には、自らが起業を望んでいるというよりは、リストラ等により他の選択肢が一つずつ消滅して、自営の道を目指すしかなくなったという人が少なくない。

    もちろんすべての40代以降の開業者に当てはまるわけではないが、もしも自分がネガティブな理由による独立起業を考えているのであれば、それは引き返してみる勇気も必要。40代以降の独立で注意しなくてはならないのは、収入の減少が生活に直接的な影響を与えることにより、家庭崩壊へ発展してしまうという悲劇が現実にとても増えていることだ。

    40代というのは、ちょうど住宅ローンを抱え、子供の教育にかかる負担も増えてくる時期と重なる。この時期に敢えて起業することは、20代〜30代で起業することよりも数倍の大きなリスクがあることを肝に銘じておく必要がある。起業の成功確率(開業から十年後まで事業が存続する確率)が約10%という水準であることを考慮すると、40代での独立はかなりの実力がある人(全体数に対して約1割の人)でないと成功させることが難しいことは、客観的な知識として頭に入れておいてほしい。40代以降であれば、むしろ自らが会社を作るよりも、20代にみられるような「小賢い起業」を見習うべきという考え方もある。

    《無意識のうちに身に付いている理想のワークスタイル》

     「起業すること」をわかりやすく言い換えると、「自分の稼ぎ方を会得すること」になる。これは、動物がまだ子供の時期にエサの獲り方を覚えるのと似た習性があって、たとえば十代の時に「自分流の稼ぎ方」を覚えた人は、それ以降の人生も商売人として生き抜いていける習性がある。逆に、サラリーマンとしてのスタイルが長年染みついてしまうと、そこから商売人の発想へと思考を転換することはなかなか難しい。

    近年の時代背景としては、サラリーマンから商売人への転換が求められている傾向にあるが、商売人としての生き方がすべてサラリーマンよりも勝っているというわけでもない。大切なことは、自分の性格や適性に合った仕事のスタイルや環境を見つけることであり、商売人には向かなくても、ヤリ手ビジネスマンとして、大企業の社長にまで昇り詰めている人もいる。時代の波に翻弄されることなく、自分の中で無意識のうちに身に付いている適性に抗わない生き方を見つけることが、理想的なワークスタイルの追求へと結びつくのだろう。
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