認知症カフェは、高齢者とその家族、地域の住民、医療や介護の現場で働く人が気軽に集まり交流する中で、認知症の予防や進行を防ぐ効果を狙う場として、国や自治体が普及を推進している (JNEWSについてトップページ
患者と家族のコミュニティを築く高齢者カフェの開発

JNEWS
JNEWS会員配信日 2019/11/8

認知症ケアの中では、自宅で介護をする家族の負担が最も大きく、それを軽減できるサービスへの潜在ニーズが高い。その具体策として、国が作成する「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」の中では「認知症カフェ」の普及が推進されている。

認知症カフェとは、高齢者とその家族、地域の住民、医療や介護の現場で働く専門家などが気軽に集まり、交流できる場を作ることで、認知症の予防や進行を防ぐ効果を狙うものである。介護をしている家族にとっても、同じ立場にある人達との交流ができることは、介護知識の情報交換、専門家への相談、困った時の協力関係を築くためのネットワーク作りにも役立つ。

認知症カフェの場とするのは、公民館、老人ホーム、病院のコミュニティルーム、個人の自宅などで、定期的に開催する日時を決めて、お茶を飲んだり、お菓子を食べながら、参加者同士が自由に会話するスタイルが一般的である。また、認知症予防になる脳トレ教室や趣味の講座を行うこともある。

自治体の中には、認知症カフェの主催者に1回あたり1~2万円の助成金を支給しているケースもあり、全国的に普及してきている。朝日新聞社は、認知症に特化した新しいウェブメディア「なかまぁる」を2018年9月に立ち上げているが、その中には、全国で開催される認知症カフェを検索できる機能があり、2019年11月の時点で4182件の主催団体が登録されている。


認知症カフェの市場には、飲食店も参入することが可能で、スターバックスでは町田市にある8店舗で「Dカフェ」という認知症カフェを月に1回のペースで開催している。認知症の患者と家族は、事前の予約は必要なく、Dカフェの当日に店舗へ行くことで、同じ病気を抱えている仲間や、認知症に関心のある住民との交流ができる。参加費用は、自分の飲食にかかる代金のみ払えば良い。

町田市では、Dカフェの名称で市内に認知症カフェの設置を推進しており、スターバックスは、その活動趣旨に賛同する形で、店舗スペースを提供している。これからの飲食店は、高齢者を主要顧客として取り込む必要があるが、そのためには介護フレンドリーなブランドイメージや、店舗環境を整備する必要があり、その取り組みとして認知症カフェの開催は有効策になる。

町田市の認知症カフェ「Dカフェ」

認知症カフェの運営は、自治体の助成金を利用する方法もあるが、その場合は、参加する介護専門職の数、参加費として請求する料金の上限、スタッフに対する報酬額(無償ボランティアが基本)などの制約がある。そのため、自治体を頼らずに、独自のスタイルで「高齢者カフェ」の業態を開発したほうが、営利の事業としては展開しやすい。

認知症患者に限らず、高齢者の中では、自分の居場所となる、または仲間作りができる場が欲しいというニーズがある。たとえば、カラオケスナックが通常は営業していない昼間の時間帯を、高齢者向けのカフェタイムとして、安価な定額料金でカラオケを楽しみながら仲間との交流ができる場とすることで、店舗の2毛作化に成功している例もある。

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