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食費高騰で人気化する自給自足の取り組みと農業投資

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JNEWS会員配信日 2023/4/28

 生活費高騰への対策として家庭菜園を手掛ける世帯が増えている。畑にするよな土地が無くても、最近では、ベランダや室内でも、トマト、レタス、ネギ、ホウレンソウなど多様な野菜を水耕栽培できるキットが多数販売されるようになっている。土を使わずに水と培養液で栽培ができるため、初心者でもチャレンジしやすく、安全なオーガニック野菜の自給自足モデルとしても注目されている。

上手に水耕栽培を行えば、自宅で家族が食べるサラダ類はすべて自給することもできるが、それでも余った野菜をメルカリなどで販売する副業も流行ってきている。食品を加工して販売すること、たとえば、漬物やジャムにして販売するには、都道府県の営業許可が必要になるが、無加工の野菜や果物を個人が販売することは自由に行うことができる。そのため、メルカリの公式ブログでも、家庭菜園で栽培した野菜を売ることが推奨されている。

育てた野菜はメルカリで売ろう!販売や配送のポイントを解説

このスモールビジネスを本格的に事業化したものが、植物工場の施設であり、個人の起業家、中小企業、大企業までが参入しはじめている。植物工場では、LEDの人工光源、空調設備、栽培養液を使うことで、製造業のように管理された環境で農作物が生産されている。土を使わないため害虫の発生要因も少なく、無農薬栽培がしやすい利点もある。

《植物工場の長所》

  • 田畑を使わずに、遊休施設の活用ができる。
  • 気象条件に影響しない栽培ができる。
  • 作物の品質が均一化できる。
  • 害虫の発生が少なく、無農薬栽培がしやすい。
  • 屋内栽培で作業者の体力負担が軽減される。
  • 照明と栽培液の成分で栄養素をコントールできる。

その一方で、植物工場は設備投資が高いことが問題点として指摘されている。
植物工場が有望事業として注目され始めたのは2010年頃からのことで、現在では、1ヘクタール以上の栽培面積を持つ施設は全国に170ヶ所以上あるが、その中の4割は赤字という状況だ。しかし、植物工場は操業から10年を超すと減価償却費が下がり採算性が向上することや、食品価格の高騰により、再注目されるようになっている。

一例として、住宅メーカーの大和ハウス(1925)と建材メーカーの三協(5932)は、「agri-cube ID」という植物工場システムの開発を進めており、茨城県那珂市で2ヶ所の植物工場を立ち上げている。工場1ヶ所あたりの初期投資額は25億円、約5000平米の屋内施設でフリルレタスやグリーンリーフを栽培する。
約60人の従業員が1日あたり2.25トンの収穫(フリルレタスで11,250株)をして、年間6億円の売上を目指す計画だ。

agri-cube IDの植物工場
■agri-cube ID納入事例の映像

こうしたトレンドに乗り、個人向けにも植物工場への投資案件は増えている。数百万~1000万円程度の出資額で、水耕栽培ユニットのオーナーとなると、半自動化でレタスやトマトを生産することができ、その販売収益から高利回りを狙えるというもので、新たな投資対象として注目されるようになっている。しかし、農業分野への投資は、農業の採算構造や欠点を理解する必要があり、太陽光発電や不動産投資とも異なっている。

【大規模化する植物工場の採算構造】

 農作物を人工的に栽培する取り組みの歴史は古いが、2010年頃からはハイテク化された都市農業の形として欧米で成長してきた市場である。当初は貨物用コンテナを改良した小規模な水耕栽培の施設を都市近郊に分散して作り、十数キロ圏内のレストランにサラダ野菜などを出荷するビジネスモデルが模索されていた。

しかし、小規模な植物工場の収益性は、初期投資と維持費に対する売上の年間利回りが1~2%と低いため、撤退する施設も増えていった。この問題に対しては、植物工場を大規模化して生産効率を高めていくことが解決策になっている。

植物工場で生産される野菜は、通常の露地栽培と比べて単価が高いが、10年前との比較では、生産コストは50%近く下がってきており、農薬を使わない、栄養価が高いという付加価値により、消費者への認知度は高まってきている。しかし、工場産の野菜が増えすぎると、小売相場は下がってしまうため、他の業者とは差別化された、高付加価値野菜の栽培にチャレンジしていく必要がある。

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JNEWS会員レポートの主な項目
・大企業が植物工場に参入する理由について
・大規模化する植物工場の採算構造
・高機能野菜による植物工場の付加価値
・世界一のノウハウを持つ日本産イチゴ栽培
・植物工場投資の問題点と方向性の解説
・個人向け農業投資案件の失敗要因について
・植物工場と障害者就労ビジネスの関係
・国が推進する農福連携支援の仕組み
・請負契約による障害者採用の仕組み
・食糧危機に備えたフードサプライチェーン変革
・サラリーマンとしての農業転職→農業法人の独立起業
・趣味+サイドビジネスとして取り組む水耕栽培

この記事の完全レポート
JNEWS LETTER 2023.4.28
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