就職差別を解消するブラインド人材採用のテクノロジー
企業が求人活動をする際にも、性別の偏見を排除した採用プロセスが重視されるようになっている。米国では、人種、肌の色、宗教、性別、身体の障害などを理由に採用差別することは法律で禁止されており、任意で提出する履歴書にも性別の記載や写真を添付する必要はない。
しかし、面接を行えば、自ずと性別はわかってしまうため、採用審査のプロセスでバイアスがかかることが問題視されるようになっている。そこで、性別を隠しながら面接を行うためのテクノロジーが注目されている。
「Interviewing.io」は、IT企業がソフトウエアエンジニアを採用するためのオンライン面接プラットフォームだが、氏名、性別、国籍、顔などの個人情報はすべて隠して、音声通話とプログラムのソースコード画面だけで面接が行える仕組みを開発している。面接担当者は、求職者にコード画面を見せながらアルゴリズムやデータの構造を質問したり、実際にコードを入力してもらうことで、性別を含めた個人的な属性の偏見を排除して、プログラミングの知識やスキルを確かめることができる。
それでも、音声からは男女の判別ができてしまうため、性別がわからないように音声の変調ができるボイスマスキング機能も用意されている。IT業界には、エンジニア職の8割以上を男性が占めていることへの批判があり、性別によるバイアスがかからない選考方法が求められている。このように、求人応募者の個人情報を完全に匿名化した上で、採用選考を行う方法は「blind hiring(ブラインド採用)」と呼ばれ、Google、Facebook、Twitch、Yelpなど、大手のIT企業を中心としたニーズが高まっている。
■オンライン面接の映像
2016年にオーストラリアで創業した「Vervoe」も、ブラインド採用のプラットフォームを開発している会社で、求人企業がオンライン上でスキルテストを実施した結果を、AIが分析することにより、採用担当者の主観的なバイアスを通さずに、優秀な人材を選考できる仕組みを構築している。
プラットフォーム内には、プログラミング、ライティング、データ入力、販売管理、財務会計などの膨大なテスト問題が事前に登録されており、求人企業は、それらの設問をカスタマイズして、独自のスキルテストをレベル別に作成することができる。VervoeのAIアルゴリズムは、単にテストのスコアを採点するだけでなく、候補者の能力を多方面(専門知識、問題解決力、コミュニケーション力など)から分析することで、1次審査→2次審査→最終選考への絞り込みを行うことができる。
大手のスーパーマーケットやコールセンターのように、毎月大量の求職応募が届く企業では、1次審査のプロセスで匿名スキルテストを導入することで、採用担当者による優秀者の見逃しを解消できることに加えて、選考にかかる時間を9割近く削減することができる。
(この内容はJNEWS会員レポートの一部です。正式会員の登録をすることで詳細レポートにアクセスすることができます → 記事一覧 / JNEWSについて)
■この記事の完全レポート
・JNEWS LETTER 2021.6.14
※アクセスには正式登録後のID、PASSWORDが必要です。
※JNEWS会員のPASSWORD確認はこちらへ
■この記事に関連したJNEWS会員向けバックナンバー
・正社員と非正規社員の間で変わる給与の分配システム
・同一労働同一賃金で広がるリモートワークの新たな働き方
・学歴に頼らない新たなキャリア形成と多様性社会の信頼構築
・多様性社会に対応した動画マーケティングと飲食店の集客モデル
・優良顧客として注目するLGBT消費者の購買特性とブランド価値観
・懲罰賠償金をベースに形成されるセクハラ対策市場への着手
※バックナンバー用ID、PASSWORDを入力してご覧ください。
(海外ビジネス事例)/(トップページ)/(JNEWSについて)/(Facebookページ)
これは正式会員向けJNEWS LETTER(2021年6月)に掲載された記事の一部です。 JNEWSでは、電子メールを媒体としたニューズレター(JNEWS LETTER)での有料による情報提供をメインの活動としています。 JNEWSが発信する情報を深く知りたい人のために2週間の無料お試し登録を用意していますので下のフォームからお申し込みください。