アパレル業界に起きる国内生産回帰とロボット製造業
これまで人気の主流だったファストファッションは、数ヶ月先の流行を予測した新作商品の製造を、人件費の安い海外工場に大量発注することで、安価なプライスを実現させてきた。しかし、主力の販路が店舗からネットへと移行する中で、生産から在庫保有、販売までのリードタイムを減らすことが求められている。
アパレル業界の平均リードタイムは、4年前には90日~120日だったが、現在では約60日となり、それを2週間程度にまで短縮することが、アパレルブランド生き残りの鍵となっているのだ。
これは、「オフショアリング(海外への生産委託)」から「ニアショアリング(国内ローカルへの生産委託)」への転換を意味しており、コンサルティング会社のマッキンゼーが2018年に行った調査でも、米国アパレル経営者の6割が、2025年までに商品調達の20%は国内近隣の生産拠点に戻ると予測している。
■Is apparel manufacturing coming home?(McKinsey & Company)
生産拠点を国内に戻すことで人件費の負担が重くなることについては、製造自動化のテクノロジーで解決することが期待されている。
米ジョージア州のアトランタを拠点とする、SoftWear Automation社が開発した「LOWRY Sewbots」は、これまで職人が行ってきた縫製作業をロボット化したシステムで、生地の裁断からミシン縫製で製品を完成させるまでの工程を、AI、カメラ、マッピングテクノロジーなどにより完全自動化させている。ロボットは作業中の生地の歪みも補正しながら、カメラで縫い目を追跡しながら縫製するため、短時間で品質の高い仕上げをすることが可能だ。
たとえば、Tシャツならば13ステップの工程を162秒で仕上げることができる。
これは、10人の縫製スタッフが担当してきた生産ラインで、1枚のシャツを完成させるのに350秒かかっていた生産能力を大幅に上回るものだ。しかも、1人のオペレーターで最大6台までのロボットを管理することができる。
■SoftWear Automation
■Tシャツの自動製造工程(映像)
LOWRY Sewbotsは、ドレスシャツ、ショートパンツ、ジーンズなど多様なアパレル商品を自動生産することも可能なため、店舗を持たずにECサイトから消費者に直販するD2Cブランドが、在庫を持たずに、注文後に商品生産を開始するオンデマンド製造も可能になる。
無在庫オンデマンド製造の利点は、商品開発から販売までのリードタイムを短縮して、流行トレンドにマッチした製品をタイムリーに販売できることだ。今後のアパレル業界の方向性としては、価格の安さが重視される流行性の低い商品については、新興国での大量生産が継続されるが、最新のデザインや高機能が求められる付加価値の高い商品は、国内生産に回帰していくとみられている。
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