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米国で「静かな退職者」が急増する労働市場の異変

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JNEWS会員配信日 2022/12/14

 数年前から「FIRE(Financial Independence Retire Early)=経済的自立と早期リタイア」の人生スタイルが注目されて、それを目指す人は増えている。年間生活費の25年分をできるだけ早い時期に貯めることで早期退職をして、残りの人生は、資産運用だけで生活できることを指すが、これを実現するには若い時期のハードワークを覚悟して、貯蓄額を増やしていかなくてはいけない。しかし、FIREに到達できるのは、ほんの一部の人達に過ぎない。

米国の連邦準備制度理事会(FRS)が3年毎に行っている消費者金融調査(2019年)によると、35~44歳世帯の純資産額は平均値が43.6万ドル(約4800万円)だが、これは上位の富裕層が平均を押し上げており、中央値でみると9.1万ドル(約1000万円)に下がる。他の年齢層でも同世代間の貧富格差が拡大しているのが、米国社会の特徴である。

《米国の世代別純資産額(2019年)》

資産運用のコンサルティングを行うフィデリティ・インベストメンツによると、米国で快適な老後を過ごすには、67歳までに定年時の年収の10倍を純資産として築く必要があると言われ、サラリーマンの平均年収からすると約51万ドルが具体的な目標額になる。しかし、実際には半数近い世帯はマイホームを含めた純資産が25万ドルにも到達していない。

《理想的な年収に対する純資産倍率》

サラリーマンの給与収入だけでは、年齢別にみた適正な純資産倍率に到達することさえ難しく、さらにFIREの実現などは夢物語である。そうした現実派の割合も高くなっているのが近年の特徴であり、2022年3月頃からは「Quiet Quitting(静かな退職)」というキーワードが、20~30代の中から流行り始めている。

このトレンドは、会社からはクビにならない程度に、必要以上には一生懸命働くのをやめることを指しており、2022年の前半からTikTokなどのSNSで「仕事で出世を目指すことをやめよう。仕事はあなたの人生ではない。あなたの価値は仕事の成果で決まるわけではない。」といった内容の動画が投稿されるようになり、世代を超えた労働者からの共感を集めた、新たな労働運動に拡大しはじめている。

■On Quiet Quitting(TikTok)

@zaidleppelin On quiet quitting #workreform ♬ original sound - ruby

Quiet Quitting(静かな退職)の対極にあったのは、ハードワークをして昇給や昇進を目指すことが奨励された企業文化であり、米国では「Hustle Culture(ハッスル文化)」と呼ばれている。しかし、ハードワークをして報われるのは、上位のエリート層だけであり、大多数の労働者は低賃金のまま苦しい生活を強いられている。こうした不満から、昔のストライキとは違った、新たな労働運動のスタイルとして、Quiet Quittingのムーブメントが起きている。

コロナ禍以降に各業界の職場で深刻化している人手不足の問題も、この動きと関連性を深めており、企業は従業員との信頼関係を再構築することが急務の課題となってきている。

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JNEWS会員レポートの主な項目
・水面下で増える「静かなる退職者」の潜在層
・リモートワーク燃え尽き症候群の動向
・オフィス回帰により生産性が下がる実態
・自主退職率が増える大辞職時代の特徴と理由
・豊かなリタイア人生を目指す生涯年金計画
・自分で決めるリタイア年齢の考え方
・年金給付開始の年齢で変わる生涯資産の計算
・FIRE早期リタイアの欠点と改善モデル
・レイオフ・テックワーカーの転職と創業支援ビジネス
・エッセンシャルワーカーから脱するファミリービジネス
・中小事業で深刻化する人手不足の要因と労働市場の急変

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JNEWS LETTER 2022.12.14
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