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クロスアポイントメント制度による大学研究者の二重就職

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JNEWS会員配信日 2020/10/13

従来、大学研究者のキャリア形成は、大学院で博士号を取得した後、「助教(助手)→講師→准教授→教授」とステップアップするコースが描かれているが、博士号取得者の数は年々増加しているため、雇用の受け皿が不足している。彼らの中では、民間企業へ就職するよりも、大学教員を目指しながら研究を続けることを希望する者の割合は6割以上を占めている。

《博士人材の就職先(国内)》

しかし、大学では年間に賄える人件費の総予算が決まっているため、すべての博士人材を正規採用することはできない。そこで、国の補助金などを財源として、1年更新の期限付きで、大学に非正規採用されるポストドクター(ポスドク、博士研究員)の職を与えているが、これは根本的な解決策にはなっていない。

そこで日本の大学が、人事制度改革として打ち出しているのが、クロスアポイントメント制度の導入である。たとえば、国立大学の教授が、勤務体系を週5日から週3日に変更して、給与もフルタイム勤務の4割減とする。残りの週2日は、協定を結んでいる他の大学や企業に「出向」の形で勤務してもらい、そちらからも給与が支払われるようにする。

この方法であれば、2口で支払われるトータルの月給額は減らないし、大学教授としての肩書きも維持することができる。一方の大学側では、教授人材の人件費を軽減できる分で、若手研究員の正規雇用を増やせるのが経営上のメリットになる。

《国立大学の平均給与額》

クロスアポイントメント制度の活用例として、立命館大学情報理工学部の谷口忠大准教授は、大学に籍を置いたまま、パナソニック・ビジネスイノベーション本部の客員総括主幹技師として、AIやロボティクス分野の技術開発にも従事する協定を2017年3月に交わしている。勤務形態として、パナソニックの従事比率20%となっているが、同社にとって、大学研究者の専門知識を製品開発に活かせることのメリットは大きい。

谷口客員総括主幹技師の紹介ページ(パナソニック)

また、大阪に本社を置く化粧品メーカーの株式会社マンダムでは、同社のライフサイエンス研究室に所属する女性研究者が、大阪大学の大学院薬学研究科の特任助教としても常勤して、学生の指導と先端化粧品科学の研究にあたるクロスアポイントメント協定を、2018年8月に締結している。

メーカー企業の研究部門では、製品化に直結した技術開発が優先される土壌があるが、クロアポ協定による大学との連携では、アカデミックな研究環境に身を置くことで、企業研究者のモチベーションを高める効果や、異分野の研究者との交流が盛んになることが期待されている。

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