高齢者の孤独を癒やすセラピードッグの派遣ビジネス
人が動物とふれあうことは、医学的な見地からも、ストレスの解消、メンタルの安定、認知症予防などの効果があることは複数の研究で報告されており、アニマルセラピー(動物介在療法)として採用されるようになってきている。
2007年に発表された研究論文では、心不全で入院した73人の患者を、セラピードッグを連れたボランティアから12分間の訪問を受けたグループ、ボランティア(人間)のみの訪問を12分間受けたグループ、何もしないグループという3層に分けて血圧変動を測定した。その結果は、セラピードッグの訪問を受けたグループの血圧が最も下がり、神経ホルモンのレベルが安定する効果が確認されている。
■Animal-assisted therapy in patients hospitalized with heart failure
こうした研究結果の裏付けにより、日本でもアニマルセラピーが事業としても成り立つようになっている。介護サービス大手のニチイ学館では、有料老人ホームやデイサービス施設の入居者を対象としたドッグセラピーを2015年から開始している。このサービスでは、性格が温厚なオーストラリアン・ラブラドゥードルという犬種のセラピー犬と、介護研修を受けた調教スタッフ(ハンドラー)とがペアとなって介護施設を訪問して、高齢者が犬と遊んだり散歩ができる時間を提供している。
■ニチイのドッグセラピー
■セラピー活動紹介
介護施設にセラピー犬を派遣する団体は全国的に増えている。もともとはボランティアからスタートした活動だが、犬の訓練やハンドラーの同行にはコストがかかることから、派遣料金を設定するようになってきている。たとえば、30人が入居する介護施設に5頭のセラピー犬とハンドラーを半日派遣して、料金は3~5万円という設定である。
それでも、犬のストレスを考えると、機械のように稼働率を高めて収益を追求することはできないため、事業としての利益率は高くない。そこで運営団体を非営利法人(NPO)として、派遣料金の他に、自治体からの助成金、企業や個人からの寄付も募ること形で活動を維持している団体が大半だが、犬をパートナーとして社会に役立つ仕事がしたいと考える人にとっては、やり甲斐のある事業になる。
日本でアニマルセラピーの先駆的な団体といえるのが、1970年代に渡米してブルースシンガーとして活躍していた大木トオル氏が2002年に設立した国際セラピードッグ協会で、様々な理由で飼い主を失った犬(捨て犬や被災犬)を殺処分から救い、セラピードッグに育成する活動を行っている。
セラピードッグに犬種の指定はないが、人とのアイコンタクトの取り方、ハンドラーとの同速歩行、ベッドから起き上がれない高齢者と寄り添うためのベッドマナーなどを教える必要があり、長期の訓練が必要になる。同団体では、トレーニングカリキュラム(45教科)を作成して、愛犬と共に活動に参加したい飼い主を対象とした訓練会を定期的に実施している。修了試験に合格すれば、セラピードッグとハンドラーの認定資格を与えている。
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