コインランドリーの開業には平均3000~4000万円の資金がかかるが、税制上の特例を受けると設備投資の70%以上を即時償却できるため、節税対策としての出店数が増えていった。開業資金が償却済みとなり、売上が伸び悩むコインランドリーは中小M&A市場での売却案件が増えている。(JNEWSについてトップページ
節税目的で急増するコインランドリーの採算構造

JNEWS
JNEWS会員配信日 2023/10/7

 古くからある無人店舗として「コインランドリー」は代表格といえるが、全国の店舗数は2万件以上あり、クリーニング店の数を超すようになっている。増加の要因は、共働き世帯の増加に伴う需要の拡大と、投資物件としてのスキームが確立されたことが大きい。

コインランドリーの開業には平均で3000~4000万円の資金が必要になるが、2017年から施行された「中小企業経営強化税制」を活用して、事業計画の認定を受けると、コインランドリー設備の約70%が即時償却できるようになる。通常の会計では、10万円以上の機械設備は、法定耐用年数による減価償却をしていく必要があるが、この特例では、開業初年度に償却できる。

《中小企業経営強化税制で100%償却できる設備》

中小企業経営強化税制の解説(国税庁)

そのため、開業初年度の決算は大きな赤字を計上して、翌年以降の黒字と相殺するすることができる。他の事業も行っている中小企業は、本業の黒字とも相殺できるため、節税対策としてのコインランドリー経営が流行っていた。コインランドリーの設備会社でも、店舗運営をすべて代行するサービスを設けることで、全国に出店数は増えていった経緯がある。

《コインランドリーの運営委託方式》

ところが、設備導入の節税対策として使える「中小企業経営強化税制」は、2025年3月末までの時限立法であることに加えて、令和5年度の税制改正では、オーナー自身が運営を行わずに、すべて外部委託されるコインランドリーについては、指定事業から外された。

コインランドリーの採算構造は、年間売上の7年分で投資額を回収できれば成功と言われている。開業資金に3500万円を投じていれば、年間売上は500万円が損益分岐点ということになる。しかし、計画通りに売上が伸びない店では、毎月の経費で赤字を垂れ流すことなるため、資金力が乏しい個人オーナーは開業から5年未満で店舗を売りに出している。

コインランドリーの売買価値は、「設備の残存価値+営業利益の3~5年分」で算定されるため、赤字店舗では「設備の残存価値のみ」となり、開業に3500万円を投じた店でも、5年後の売却額は1000万円以下になってしまう。

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JNEWS会員レポートの主な項目
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JNEWS LETTER 2023.10.7
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