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預金流出が引き起こしたシリコンバレー銀行破綻の構造

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JNEWS会員配信日 2023/4/3

 突然死のように起きた米シリコンバレー銀行(SVB)の破綻は、預金者が預けていた資金は全額保護されることを早急に米財務省とFRBが決定したことで、リーマショックのような最悪の事態は今のところ避けられている。しかし、SVBはハイテク分野の新興企業を主要顧客とする銀行であったことから、テック分野のスタートアップ界隈では混乱が起きている。

SVBは、スタートアップバンクとしてのサービスを強化していたことから、2022年に株式上場(IPO)したスタートアップ企業の44%は、同行に預金口座を保有している。SVBは、他の銀行よりも法人口座の開設が容易で、リモートによる管理ができるため、外国人創業者が米国内のVBから調達した資金をプールする口座としても使われていた。

さらに、SVBは「Venture Debt(ベンチャーデット)」という仕組みの直接融資も行っているため、スタートアップの創業者は、株式と融資の両輪で資金調達を行い、IPOや企業売却までのゴールを目指すのに重要な金融機関としての役割を担っていた。

今回の破綻は、そのスキームが崩れたことが理由ではない。SVBの預金量をみると2019年から2022年にかけて、497億ドル→1907億ドルと急増しているが、これは、米政府の金融緩和により過剰な流動性(金余り)が起き、株式市場も高騰したことが関係している。しかし、2022年3月以降は FRBは急ピッチの利上げを開始したことから、SVBは最大で年率4.5%の預金金利を払う必要が生じていた。

米国の銀行預金には、決済用として使われる無利子の要求払預金と、定期預金などの利子付き預金の2種類があるが、SVBのような法人客が主体の銀行では無利子預金の割合が高いのが特徴である。しかし、政策金利の上昇により、利子付預金に資金を移動する顧客が増えたことが、銀行の利払い負担を大きくしていった。

《シリコンバレー銀行(SVB)の預金量推移》

SVBの主要顧客であるテクノロジー企業は、株式による資金調達が主体のため、預金量に対する貸付金の比率は低く、預金残高の55%を長期の米国債(主に10年債)で運用していた。しかし、国債は金利が上昇すると流通市場での価値が下がる性質があるため、SVBの信用不安が起き、大口顧客を中心に預金を引き出す動きが加速したことから、一気に経営が破綻してしまった。

Silicon valley bank

SVBの破綻に連鎖して、経営危機が露呈したクレディ・スイスも、債券相場の下落によって信用不安が広がったことは共通している。同行は、世界の富裕層を顧客層としてグループ全体で約1.6兆スイスフラン(約232兆円)の資金を運用しているが、相次ぐ不祥事の発覚により、2022年10月には、SNSを起点とした取り付け騒動が起き、約2週間で129億スイスフラン(約1.8兆円)もの預金解約が起きていた。

そこへ、SVBの破綻による信用不安の連鎖がトドメとなり、自力の経営が難しくなり、同じスイスを拠点とするプライベートバンクのUBSグループが買収することが発表された。このような事例は、上記2行に留まることなく、世界の銀行に波及しはじめている。しかし今回は、これまでの金融危機とはタイプが異なり、安全資産→リスク資産への資金移動が起きている。それがどういう構造によるものかを解説していきたい。

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JNEWS会員レポートの主な項目
・シリコンバレー銀行破綻の道筋
・富裕層から起きる銀行預金の取り付け騒動
・大口銀行預金が向かう資金の逃避先
・SVB破綻後に安全資産として買われる暗号通貨
・銀行預金の5割占める無保険預金の実態
・クレディ・スイスの破綻が意味するもの
・プライベートバンクの衰退と投資ロボアプリの台頭
・海外で注目されるハイイールド預金口座の高利回り貯蓄
・ハイイールド預金の仕組みと投資ロボの収益モデル

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