商業主義オリンピックの運営資金を賄うテレビ放映権ビジネス
オリンピックは4年に1回開催される、スポーツの世界的な祭典だが、その運営が商業主義になっていることは、各所で指摘されている。もともと、オリンピックは、非営利で行われるイベントであり、大会の収支はプラスマイナスゼロになるように計画されているが、直接的な予算だけでも3千億円を超す大イベントだけに、その運営資金に絡んでは、ビジネスとしての側面も併せ持っている。
大会収入の大きな柱となるのは、「テレビ放映料」「スポンサー契約料」「チケット売上」の3つであり、近年のオリンピックでは、特にテレビの影響力が非常に大きくなっている。オリンピックの世界中継(衛星中継)は、1964年の東京大会からスタートしたが、現在では200ヶ国以上に配信されており、ロンドン大会の開会式は、世界の視聴者数が9億人を超すほどになった。
世界各国のテレビ局に対して、放映権の一括管理を行っているのが、国際オリンピック委員会(IOC)で、その下部組織として、オリンピック放送機構(IBC)という団体があり、大会期間中に国際放送センターを構築して、各競技会場からの映像を、世界のテレビ局に配信している。そのため、放映権収入についても、IOC が各国の放送局から一括徴収した上で、開催国のオリンピック委員会(日本の場合はJOC)に、およそ半分を分配している。
【オリンピックTV放映の仕組みとIOC利権】
国際オリンピック委員会(IOC)は、オリンピックのマーケティングを取り仕切ることにより、団体として活動をしていく収入を得ているが、その47%は放映権の販売により形成されている。競技場でのテレビ映像の撮影は、開催国のホストTV局が担当することになるが、それでも IOCが放映権を仕切っているのは何故か?それは、オリンピックの中立性が関係している。
国際放送センター(IBC)から配信される放送データは、「国際信号」と呼ばれるもので、どの国にとっても公平で、偏りのない映像の内容で送信されるのが原則。その映像を受信した各国のテレビ局が、独自の実況や解説、応援音声などを加えながら、自国の視聴者に向けて放送しているのだ。
IOCでは、この放映権を、オリンピック開催の度に値上げしてきており、大会運営収入の柱にしてきている。そのため、各国のテレビ局では、従来の無料放送だけでは、高騰した放映権の支払いを賄うことができず、一部の内容を有料放送へと移行することで、すべての人達が平等にテレビ観戦できないという弊害も生じてきている。
それが、近年のオリンピックが「商業主義」と言われる所以だが、その一方で、昔のように、オリンピックの開催地が、政府からの多額の資金援助(国民の税金)に頼らなくても済むようになったという利点があり、商業主義が必ずしも“悪い”というわけではない。
こうしてみると、現代のオリンピックは、チケットやライセンスグッズの販売よりも「放映権」による収入に大きく依存していることがわかる。そのため、テレビ局は、オリンピックのステイクホルダー(利害関係者)であり、様々な番組の中でオリンピックを盛り上げようとしていることも頷ける。
2020年までには、テレビ番組の視聴形態も多様化して、インターネットやスマートフォン、タブレットからでも見られるようになるだろうが、それも、番組放映権を獲得したテレビ局の系列でなければ実現できないことから、今後はテレビ局と携帯キャリアとの資本提携が進んでいくことになるかもしれない。
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・スポンサー契約料収入の推移と分配ルート
・「TOKYO 2020」の国内スポンサー制度について
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・ホテル業界で期待されるオリンピック効果の捉え方
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