金利上昇局面のテック不況とエンジニアレイオフの状況
米国の株式市場は2022年に入ってからの半年で2割以上下落した。インフレに伴う政策金利の引き上げにより、金融市場では投資家の資金環境も悪化して、積極的な投資を抑制したり、様子見をする動きが出てきているためだ。
この影響を直接的に受けているのが、これまでハイテク業界を活気づけてきたスタートアップ企業である。未上場のスタートアップ企業は、毎月の資金繰りをベンチャーキャピタル等の出資に依存しており、その資金が枯渇すれば、会社を維持することができなくなってしまう。それを回避するには、従業員を解雇して毎月の固定費を減らすしかない。
米国スタートアップのレイオフ情報を集計するサイト「Layoffs.fyi 」によると、コロナ禍以降は1000社を超すスタートアップ企業がレイオフ(一時解雇)を行っており、その対象者は16万人を超している。米国テック業界のレイオフは、新型コロナの感染拡大が広がり始めた2020年3月~6月と、金利引き上げが開始された2022年3月以降に2つの波がある。
今回のレイオフは、2000年代のドットコムバブルの崩壊以降で最大規模となっており、サービスのカテゴリーも、フードデリバリー、eコマース、金融、不動産、ヘルスケア、教育など広範囲に及んでいる。
テック不況は、コロナによる市場環境の変化、インフレと金利上昇、半導体の不足、ウクライナ危機など複合的な要因が影響しており、事業の先行きが不透明になっていることから、会社の大小に関係なく、資金繰りがタイトな会社ほど大胆なレイオフを行う状況になっている。
具体例としてロボット掃除機の世界的なメーカー「iRobot」は、2005年にナスダックに上場して、2021年には15.6億ドルの売上高があった。コロナ禍では消費者の在宅時間が増えたことによる恩恵を受けた企業の1つだ。
しかし、安価な中国製ロボットとの競争が厳しくなっていることと、半導体不足による納期の遅れから受注キャンセルなどが重なり、2022年第2四半期の売上は、欧州が39%減、米国が29%減、日本が18%減となり、営業利益が赤字に転落した。
同社のビジネスは、販売単価の下落と在庫の積み重ねにより、コロナ収束期から利益率が急速に悪化している。
同社の株価は、今年に入ってから70%近く下落していたが、2022年8月にアマゾンが相場よりも22%高い17億ドルで買収することを発表した。同時にコスト削減策として、約1700人いる従業員の約1割がレイオフされる。iRobotのフリーキャッシュフロー(自由に使える資金)は、2022年からマイナスとなっており、借入や資産の売却による資金調達の必要性に迫られていた。
世界経済の先行きが不透明な時代には、手持ちの資金はできるだけ確保しておいたほうが良いという風潮はテック業界全体に広がっており、従来よりも資金繰りを重視した経営へとシフトしてきている。
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■JNEWS会員レポートの主な項目
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・バーンレートとランウェイの算定方法
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・2021~2022年に変化したデジタル投資トレンド
・スタートアップ狩りをするヘッジファンド
・2022年にスタートアップを襲う暴風雨
・暗号資産への投資スタンスについて
・インフレ局面に対応した値上げ戦略と競合の価格分析
・デジタル資産としての価値を高めるチケット市場
・暗号業界から浮上するWeb3.0ビジネスへの変革
・コロナ収束期に加速する新型インフレの特性と物価高騰
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