中小の会社経営者にとっては、従業員の新型コロナ感染対策を十分に行うことに加えて、従業員が感染してしまった時の対応も、事前に想定しておく必要がある。ポイントとなるのは、どのような状況で、会社側が従業員に対する休業補償の責任を負うのかという点である。JNEWSについてトップページ
企業が感染加害者にならない対策と従業員の守り方

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JNEWS会員配信日 2020/3/5

 中小の会社経営者にとっては、従業員の新型コロナ感染対策を十分に行うことに加えて、従業員が感染してしまった時の対応も、事前に想定しておく必要ありそうだ。ポイントとなるのは、どのような状況で、会社側が従業員に対する休業補償の責任を負うのかという点である。

労働基準法では、「使用者の責に帰すべき事由」、つまり会社側の責任で休業や休職の指示を出した場合には、該当の従業員に休業手当(平均賃金の6割以上)を払う義務が、会社側にはある。

一方、感染症法の中では、指定感染病に定められた「COVIT-19」の症状が確定した時点で、都道府県知事が患者に対して就業制限(休職)や入院の勧告を出すことになっている。

その場合には、休職が「使用者の責に帰すべき事由」には該当しないため、会社が休業手当を支給する義務は無い。その代わりとして、会社が加入している健康保険(国民健康保険は不可)から傷病手当金が、休み始めた4日目から平均月収に対して2/3の割合で支給される。(最長で1年6ヵ月)。

しかし、感染者と同じ職場で濃厚接触していた社員や、感染が疑われる社員を、会社側の判断で自宅待機にする場合には、「使用者の責に帰すべき事由」に該当して、会社の負担で休業手当を払う必要がある、というのが厚労省の見解だ。業務で取引先を訪問したり、店舗の接客で感染者と濃厚接触したことによる自宅待機も同様である。

ただし、民法の規定では、「天災事変などで休業の責任が労使のどちらにもない時」は、労働者に休業中の賃金請求権は無いという解釈もされている。そのため、職務中に感染した形跡が無く、発熱などで体調が悪い社員の休職は、当面は有給休暇で対応し、有給日数が無くなれば、特別休暇へ移行する流れもある。特別休暇は、法定外の休暇になるため、有給・無給は会社側の判断で決めることができる。

無給の自宅待機は、社員の生活が困窮することになるため、労使の間で充分に話し合う必要があるだろう。無給期間が長期化すれば、社員は会社を去っていくことになり、会社が平常業務に戻った後に人手不足が生じてしまう。

《COVIT-19感染による休業補償例》

  • 会社の業務で感染者と濃厚接触して自宅待機する場合
    会社負担による休業手当の支給(平均月給の6割以上)
  • 通勤中の感染者との濃厚接触で自宅待機する場合
    有給休暇で対応、長期化すれば特別休暇(有給or無給)
  • COVIT-19感染が確定した社員を休ませる場合
    社会保険による傷病手当金(平均月給の2/3)
  • 社内に感染が出て、他の社員を自宅待機にする場合
    会社負担による休業手当の支給(平均月給の6割以上)

【社員から民事訴訟されるケーススタディ】

会社の職務を行う中でCOVIT-19に感染した場合には、社員から会社側に損害賠償の請求をされる可能性もある。

ケーススタディとして、病院に勤める看護師が、結核の入院患者から二次感染した事例では、労災事故として扱われ、労災認定がされている。治療費や休業中の補償、後遺症に対する障害補償などは、雇用主が加入する労災保険から支払われるが、感染した看護師は、それ以上の損害賠償を雇用主(病院)に対して請求することができる。

支払いについて揉めれば、民事訴訟で争われることになるが、防護マスクやゴーグル着用の指示、殺菌消毒の状況など、病院側がどれだけの安全対策をしていたのかにより、裁判の勝敗と賠償額が変わってくる。

COVIT-19の感染被害は、病院に限らず、多業界に及ぶことが予想されるため、中小の会社経営者は、従業員の健康管理と、感染リスクの高い業務を事前に把握して、対策を講じていくことが必要になる。たとえば、既に感染が拡大している地域へ社員を出張させることや、体調が悪い社員に接客業務を続けさせて、集団感染のクラスターを作ってしまった場合には、会社側の責任が問われる可能性が高い。

こうしたリスクを避けるには、従業員の中で感染者が出る前に、テレワークで行える業務は在宅勤務に切り替えたり、店舗では接客サービスの形態を変えるなどの策を、できるだけ早い段階から実行していくことが大切だろう。

参考例として、中国のケンタッキーフライドチキン(KFC)では、1月12日の時点で、陝西省西安市の店舗で接客業務を行う従業員がCOVIT-19に感染したことが発覚した。KFCは、他の地域の消費者に対しても不安を与えない策として、デリバリーサービスの商品受け渡しを行う際には、配達員と注文者が2メートル以内に近づかない方式を2月4日から導入している。このような非接触型のサービスは、中国の先行事例を参考にして、他の国でも次々と採用するようになっている。

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