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酷暑で需要が急拡大する屋外労働者向け熱中症対策市場

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JNEWS会員配信日 2023/8/18

 夏の暑さは年々厳しくなり、猛暑が地域経済に与えるマイナスの影響が研究されるようになっている。特に深刻なのは、建設業や農業など、屋外で働く労働者のパフォーマンスが落ちることと、健康への影響である。

気候変動についての調査研究を行う、エイドリアン・アルシュト・ロックフェラー財団レジリエンス・センター(Arsht-Rock)のレポートによると、猛暑による米国内の経済損失は、控えめにみても年間1000億ドルで、2030年までに2000億ドル、2050年までに5000億ドルに達すると予測している。

猛暑による経済損失の根幹にあるのは、労働者の熱中症対策が強化されて、就労時間の見直しをしなくてはいけないことである。米国内では、人口の5%にあたる約1650万人が、1日の最高気温が32度を超す環境の中で、年間100日以上働いている。温暖化対策が成功しなれば、2050年には人口の30%が極端な暑さの中で働くことになる。異常な暑さの中で働くのは、黒人やヒスパニック系労働者の割合が高いことから、炎天下での屋外労働は、人種差別問題としても取り上げられるようになっている。

《32度以上の気温に晒される労働日数(米国)》

EXTREME HEAT The Economic and SocialConsequences for the United States

高温の環境で働く労働者は、熱中症の死亡率が上昇することが確認されているが、それ以外でも、暑さによる転倒、滑落、つまずきなどの事故による労働災害が、米国内では年間12万件報告されており、このまま対策をしなければ、さらに4倍の45万件にまで増えると予測されている。

そのため、雇用主に対して猛暑の中で従業員を働かすことに規制をかける動きは世界に広がっている。米国では、最高気温が華氏90度(摂氏32.2℃)を、暑さ対策が必要なベースラインとしているが、この基準は華氏85度(摂氏29.4℃)まで下げられる可能性がある。

カリフォルニア州は、米国初の熱中症予防についての法令を制定している。その内容は、建設、農業、造園、運送など、屋外で働く作業者と監督者が熱中症予防の研修を受けること、作業者1人につき1時間あたり最低1クォート以上(約1リットル)の新鮮な水を無償で与えること、日陰のシェードを提供して、少なくとも1回5分間以上のクールダウン休憩を取れるようにすること、すべての屋外作業場で書面による熱中症予防計画を作成することを義務付けている。

水の提供場所は、作業者が活動するエリアの限りなく近くに複数配置する必要があり、それが出来ない場合には、いつでも水が飲める休憩を頻繁に取れるシフトを組まなくてはけない。

日陰を作るためのシェードは、同時に休憩する人数に対応した広さが必要で、屋外の作業者には、熱から身を守るため予防的にクールダウン休憩が取れる権利が与えられている。 また、熱中症の兆候がある作業者に対しては、症状が収まるまでは「仕事に戻ること」を、管理者が命令することはできない。

カリフォルニア州の熱中症予防規則

このように、屋外労働者の熱中症対策に配慮した規制が強化されることで、仕事の生産性は下がることになる。それでも給与の保証はしなくてはいけないため、酷暑に適応した「働き方改革」を進めることは急務の課題であり、そこには、ハードとソフトウエアの両方で様々なビジネスチャンスが潜んでいる。

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・特許で知財化される空調服の開発市場
・規制化される暑さ指数による就労制限
・熱中症モニタリングデバイスの開発
・猛暑に適応したワークタイムシフト
・欧州に広がるシエスタ休憩の問題点
・冷却度日数で変化する不動産の価値
・気象リスクを軽減する天候デリバティブ
・冷却日数による天候デリバティブの契約例
・観光業界を支えるシーズンワーカーの派遣ビジネス
・脱炭素マネーを追う金融ビジネスと投資の捉え方
・異常気象に向けたビジネス商機とIoT観測ネットワーク

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