外食習慣の変化で加速するクイックレストラン業態開発
新型コロナウィルスの位置付けが「5類感染症」に移行して、マスクの着用義務も緩和されたことで、週末の外出も増えるようになってきた。しかしコロナ前と同じ生活スタイルに戻っているわけではない。飲食業界では、以前の業績を支えていた大人数の宴会は減少したままで、深夜帯の来店客数も伸びていない。その一方で、テイクアウトができるファストフードは好調で、コロナ前よりも売上が伸びているのは、この業態だけである。
人と交流する場としても、飲食店が無くなることはないが、飲食店の形態は時代と共に変化している。米国ではファストフードの業態を進化させた「クイックサービスレストラン(QSR)」の業態が急成長しており、フランチャイズチェーンとしても店舗数を伸ばしている。QSRの特徴は、フルサービスの接客は行わずに、セルフサービスの店内飲食とテイクアウトの両方に対応していることで、調理の方法も工夫されて、料理を提供するまでのリードタイムが短縮されている。
ハンバーガーやピザなどの代表的なファストフードに加えて、和食、中華、イタリアン、地元の郷土料理など、多様なカテゴリーのレストランがQSR化してきている。背景にあるのは、タブレット型の注文端末やモバイル決済など、飲食店向けのテクノロジーが普及して、接客にかかる人件費を軽減できるようになったことと、顧客側もチップの負担を減らしたいことがある。
米国では、外食の精算時チップを払うことが習慣として定着しているが、フルサービス型のレストランは食事代の20%が基本となっている。パンデミック以降は、物価の高騰によりチップを節約したい消費者が増えて、クイックサービス型のレストラン(QSR)に流れている。
ただし、QSRもチップが不要なわけではなく、電子決済フォームの中で10%前後のチップを任意で課金する機能が普及してきている。QSRの従業員にとっても、チップは給与とセットで得られる重要な収入源となっている。フルサービス以外のレストランにもチップが普及していく最近のトレンドは「Tipflation(チップフレーション)」と呼ばれて、消費者はチップを払うことへの疲労感もあり、できるだけチップレートの低い業態を利用したいと考えている。
インフレによる生活費の高騰により、飲食店の利用形態に変化が起きていることは間違いなく、米国のチップ文化を廃止したいという声も上がってきている。米国に進出している日本食レストランの中では、日本の慣例に従い、チップを受け取らない店舗もあり、米国人からは支持されている。反面、日本の飲食業は、これまで過剰なサービスを提供してきたシワ寄せが、従業員の低賃金と人手不足に繋がっており、新たなサービス形態への転換が求められるようになってきた。
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・社会行動学からみたセルフ注文の特性
・接客人材の人手不足が深刻化する理由
・エッセンシャルワーカーから脱するファミリービジネス
・中小事業で深刻化する人手不足の要因と労働市場の急変
・セルフオーダー端末による飲食店の客単価向上と経営改革
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・JNEWS LETTER 2023.5.25
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