デジタル給与で変化するサラリーマンの生活スタイル
送金アプリの需要として潜在的に高いのが、企業が給与の支払いを、銀行振込から送金アプリに変えることである。
賃金の支払い方法については、労働基準法による古い規定があり、現金支給が原則だが、労働者との合意があれば「銀行振込も可」となっていた。しかし、日本政府は、本格的なキャッシュレス社会の普及に向けて、資金移動業者が提供する送金アプリによる給与の支払い(デジタル給与)を認める規制緩和を進めている。
■資金移動業者の口座への賃金支払についての課題の整理(厚生労働省)
これまで、企業は給料の銀行振込手数料として、1件あたり200~600円を負担しており、毎月の給与、ボーナス、その他の手当支給などを含めると、年間では社員1人当たり1万円前後の銀行手数料がかかっている。これを送金アプリの導入によって軽減できるメリットは大きい。たとえば、pringが法人向に提供している「pring法人送金」では、1件あたり50円の手数料で、会社→個人のスマホへ送金することができる。
現状では、給与管理システムの変更に投資が必要なことから、すぐにデジタル給与に切り替わるわけではないが、社員から請求された経費清算などの小口送金で送金アプリが活用されるようになっている。ホテルチェーン、東横インの本社部門では、これまで現金で行ってきた出張旅費などの経費精算を、2021年11月からpringに切り替えることで、社員のスマホに直接送金できるようにしている。
これにより、受領の確認や記録のための事務負担を軽減できる効果も大きい。
さらに、pringの法人送金は、株式会社ADVASA(アドバサ)が開発する、福利厚生ペイメントシステム「FUKUPE(フクペ)」と連携して、給与の前払いや日払い送金も可能にしている。人手不足が深刻な飲食業やサービス業では、アルバイト人材を確保するため、給与を月1回払いではなく、希望に応じて前借りしできたり、日給、週給制として支払う制度への変更が有望視されている。
ADVASAは、従業員の出勤状況を管理して、出勤した日数や就労時間によって、働いた分の給与が即時払いできるシステムの開発を行っている。
このように給与払いの仕組みが変革されることで、地域の小売業やサービス業への経済効果も見込まれている。デジタル給与が送金アプリのウォレットで管理されると、そのまま店舗での買い物決済にも使うことができるようになり、マネーの市中循環は、銀行振込よりも良くなるためである。逆に言うと、デジタル給与は無駄使いしやすいため、毎月の給与を「生活費」「預金」「投資」などの項目に自動的に振り分けられるポートフォリオ機能も重要になってくる。
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