近所付き合いを代行するマンション管理の業界構造
マイホームを購入するにあたり、立地条件、住宅のデザインや間取りなどを優先順位の上位にして決める人は多い。しかし、それにも増して重要なのが近隣住民との付き合いである。ゴミ出しのルールは自治会によって決められているし、夏祭りや運動会への参加が習慣化されている地域もある。強制ではないにしても、それらの住民活動に参加することをストレスに感じる人は増えている。
地域よってゴミ出しルールは厳しく、自治会活動は住民のストレスになっている。
これまでは、住民がボランティアで行ってきた町内清掃や防犯活動も、高齢化で昔のようには行えなくなり、荒廃する地域は増えているが、これは町全体の不動産価値を下落させることにも繋がっている。
そうした理由から、一戸建ではなくマンションを選ぶ人も少なくない。日本国内では3280万件の「持ち家」がある中で、約2割にあたる665万戸は分譲マンションを購入している。一戸建とマンションどちらが良いかは、よく議論されるテーマだが、「土地を所有すること」が重要視されてきた価値観は次第に変化して、面倒な住民活動は業者に委託でき、生活支援サービスが充実したマンションの資産価値が高くなっている。
国土交通省が行っている調査でも「今後の望ましい住宅形態」として、一戸建てにこだわる層は減少して、「一戸建、マンションどちらでも」「マンション派」の割合は25年前よりも30%近く伸びている。
一方で、所有するマンションの管理については無関心な人が多い。分譲マンションのメンテナンスや修繕計画については、マンション住民(区分オーナー)による管理組合が運営されており、その中で話し合われる仕組みだ。しかし、住民によるマンション管理が行われる方式(自主管理)は全体の6%程度に過ぎず、残りの94%は管理会社に委託する形で丸投げされている。
管理組合の役員(理事長、副理事長、会計など)ついても、立候補者は少ないためい、輪番制で行われるのが通例で、理事長の選任もクジ引きやジャンケンで決めているケースが多い。一方で、区分オーナーが毎月納めている管理費は月額1.5万円、修繕積立金は月額1.1万円が平均値となっており、マンション管理に関わる市場は年間で1兆円を超す規模がある。「金は払うが、口はあまり出さない」というマンション住人の特性により、この市場では甘い蜜が吸えるのも事実だ。
そのため、大手のマンション開発業者(デベロッパー)は、新築物件を販売した後、系列会社で管理業務を受託することで、継続的な収益を得る業界構造になっている。この弊害として、管理を外部委託するマンションでは、常に割高な金額で、設備のメンテナンスや交換、建物の修繕を行っている。
しかし、今後は老朽化するマンションも増えて、修繕方法を住民同士で話し合う時期に差し掛かっていることから、管理組合の役割が改めて見直されるようなってきている。
10年~15年毎に行われる大規模修繕工事の他に、築30年を超した頃からは、給水設備やエレベーターの交換、駐車場の改修など、資金がかかる工事は増えてくる。デベロッパー系列の管理会社に丸投げするだけでは、区分オーナーの金銭負担は重くなるばかりのため、管理組合と業者との交渉をサポートする専門家へのニーズも高まっている。
住民同士のコミュニケーションをサポートしたり、代行するサービスはマンションに限らず、戸建住宅で形成されるコミュニティでも必要とされており、従来の自治会だけでは対応できなくなっている問題を解決することが、新たなビジネスチャンスとして浮上している。
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