企業の生き残り策として、コロナ危機の中で不足している物資やサービスに着眼して、一時的に事業内容を変更することが注目されている。国際的な物流の停滞もあり「自国で必要な物資は、自国で生産せよ」という風潮が各国で高まっている。
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不足物資のコロナ特需に活路を開く中小業者の生き残り策

JNEWS
JNEWS会員配信日 2020/4/8

 新型コロナウイルスによる経済損失は世界に及んでおり、各業界でそれぞれ数兆円以上の規模に及ぶことも予測されている。

日本の自動車業界でも、新型コロナの感染が拡大しはじめた2020年2月以降は、ディーラー店舗を訪れる客が激減しており、日本自動車販売協会連合会の発表によると、2020年3月の新車販売台数は32.1万台で、前年比で約10%の落ち込みとなっている。消費者が新車の買い控えをするのは、これからが本番であり、更なる販売台数の落ち込みが懸念されるところだ。

2020年3月の新車販売台数(日本自動車販売協会連合会)

2月後半からは、部品調達のサプライチェーン物流が止まっていることもあり、各自動車メーカーは、工場の一時休止や稼働率を落として生産調整をし始めている。その間も、従業員の給料は発生するため、コロナ不況が長引くとすれば、今後は「どれだけの内部留保(利益剰余金)があるか?」という体力勝負になってくる。

幸いにして、日本企業の内部留保は、コロナ危機の前までは7年連続で過去最高値を更新しており、2018年度末の時点では463兆円の蓄えがある。これは他の先進国と比較しても最高水準であり、今回の株価暴落後に、海外投資家が日本株を買い始めている一因になっている。

しかし、内部留保の状況は、企業によって大きく異なっており、過去の利益が少ない会社では、コロナ危機から数ヶ月で資金繰りはショートすることになる。利益が多い会社でも、消費低迷が長期にわたり続くとすれば、従業員の生活を支え続けることはできない。

そうした状況の中で、企業の生き残り策として、コロナ危機の中で不足している物資やサービスに着眼して、一時的に事業内容を変更することが注目されている。

このような取り組みは、1940年代の戦時中に、民間工場が軍事工場へと転換した時以来だが、コロナ危機は世界全体が直面している大災害であり、その中で様々なコロナ特需が生まれている。2020年2月以降、中国では多くの企業がマスク製造に参入して、感染拡大する米国や欧州への輸出を開始している。

医療現場で使われるマスクを輸出には、保険機関が定めた基準検査に合格する必要があるが、その承認に通常は半年から1年程度かかる。しかし、現在は緊急事態であることから、審査は簡略化されており数週間程度でも承認を取得することが可能になっている。中国企業は、こうしたコロナ特需をビジネスチャンスと捉えて、様々な医療資材を製造するようになっているのだ。

しかし、中国製品には品質面の不安があることや、貨物物流の停滞もあるため「自国で必要な物資は、自国で生産せよ」という風潮が、各国で高まってきている。日本でも、コロナ患者の増加はこれからが本番とみられるが、医療用だけでも以下のような物資が不足している。これら製品の中には、他分野の製造業者でも手掛けられるものがあり、日本の技術は折り紙付きである。

《コロナ機器で不足している医療用物資(一部)》

  • 医療用マスク
  • 医療用手袋
  • 防護服、医療用ガウン
  • 医療用ゴーグル
  • 人工呼吸器
  • 野外医療ユニット
  • 院内感染を防ぐ換気設備
  • 消毒用品
  • ウイルス検査用の試薬、材料
  • 鼻腔用綿棒

既に欧米では、不足している医療物資を、他業界で稼働していない工場や設備を活用して製造するプロジェクトが多数立ち上がっている。これには、社会貢献に加えて、コロナ特需による売上げで従業員の雇用を守ろうとする目的もある。その中からは、コロナ終息後後にも、新たな医療用品メーカーとして定着する企業が出てくることが予測されている。今回のレポートでは、中小業者が不況の中でも生き残っていくために、コロナ特需に関わっていく方法について解説していきたい。

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JNEWS会員レポートの主な項目
・コロナ特需に向けた世界企業の動向
・フォードモーターが手掛ける医療用具生産
・中小企業がコロナ特需に参入する視点
・日本政府のマスク一括買い上げシステム
・補助金で支援される介護施設の感染対策リフォーム
・随意契約によるコロナ関連物資の一括調達システム
・30兆円超、公共事業としてのコロナ対策市場
・中小業者ができる随意契約の獲得方法について
・コロナ禍で高まる個人スキルの特徴と売り方

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