払いすぎ保険料を還元するInsurTech参入の視点
人生の中では、思わぬ事故やトラブルに巻き込まれたり、いつ重病に罹るかもわからない。そんな時に備えたリスク対策として、ほとんどの人は何種類もの保険に加入していることだろう。特に日本人は、保険が好きな国民性であることで知られている。
高額の医療費が発生した時に、治療費の一部が給付される「医療保険」と「ガン保険」は、日本国内で年間530万件を超す新規契約がある。累計の総契約数は6,123万件で、2000年頃との比較では2.6倍に増えており、現在の生命保険会社にとっては最大の稼ぎ頭となっている。
もともとの医療、ガン保険は、欧米で商品化されたものが、外資系保険会社によって、日本市場向けにも販売されるようになったものだ。しかし、日本では公的保険制度が充実しているため、民間医療保険への加入は必要なし、と指摘する専門家の意見もある。
日本では、高額の医療費がかかった場合でも、月間に支払った金額が上限(所得によって上限額は異なる)を超した時には、払い戻しが受けられる制度があるためだ。ガンの手術や投薬治療を受けるケースでも、保険診療の範囲であれば、その適用になる。
■高額医療費支給制度の解説(協会けんぽ)
一方、民間の医療保険とガン保険にダブルで加入すると、月々の保険料は40代の場合で約8,000円が相場。30年継続加入するとトータルでは約290万円の保険料を払うことになるが、これらは掛け捨て型商品のため、大半の加入者は、実際に受ける保障よりも、払い込む保険料のほうが多くなる。もちろん、保険に加入していて助かる人もいるが、全体の収支でみればマイナスの人が大多数を占める。
保険とは、そうした構造によって成り立っている。
日本のガン保険市場を開拓した「アフラック」の開示データによると、医療保険とガン保険の総契約数は約2,100万件であるのに対して、2018年度下半期(半年)の保険金支払いは、入院給付金が59.8万件、手術給付金が34.1万件となっている。
2つの給付金はセットで受け取る患者が多いため、1年間の保険金請求者は、およそ120万人と推定でき、保険契約者の5%ということになる。
つまり、5%の患者を95%の契約者が支えていることになるが、保険料収入の中からは、保険会社の人件費や広告宣伝費、販売代理店へのマージンが支払われており、患者への保険金として給付されているのは、保険料収入の35%という内訳である。
こうした保険の採算構造が良い・悪いということではないが、加入者の立場からみて、もっと条件の良い保険を開発することは可能だ。その方法を端的に言えば、健康状況が良い人だけを集めてグループ化した保険制度を作ることである。保険の加入から契約の管理までをオンラインで効率化することで、経費は極力抑えてて、「保険料収入-保険金支払額」で生じた余剰金は、加入者に分配(返金)すれば良い。
17世紀に発案された保険の起源は、仲間同士がグループを作り、病気やケガで働けなくなったり、事故が起きた時に支え合うための互助制度として生まれたものである。しかし、現代の保険会社は巨大化しすぎて、無駄な販売経費を使いすぎている。そこで原点に立ち戻り、小グループの中で組成される保険システムが世界で開発されてきている。これは、P2P保険やソーシャル保険と呼ばれ、保険業界全体を変革する可能性を秘めている。
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■JNEWS会員レポートの主な項目
・P2P保険の成り立ちと仕組みについて
・グループ加入を仲介するP2P保険のビジネスモデル
・中国で人気化する後払い型P2P保険の仕組み
・コミュニティによる医療費無駄遣いの共同監視
・重症患者に向けた医療クラウドファンディングの長短
・製薬会社をスポンサーとした高度先進医療の受診
・水面下で破綻する医師賠償責任保険の解決策
・リスクとリターンを共有する成果連動ヘルスケア商品
・ブロックチェーン化されたミニ保険の開発モデル
・仮想通貨から生まれる新たな金融商品と有望資産
・生命保険金を前借りする人生決済と新たな介護モデル
■この記事の完全レポート
・JNEWS LETTER 2019.8.1
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