ロボットに奪われるホワイトカラーの仕事と近未来の労働市場
円安が日本経済にもたらす影響には、メリットとデメリットの両方が考えられるが、雇用の面では、海外に出ていた仕事が、国内に戻ってくることが期待されている。ドル高・円安に加えて、中国通貨(人民元)との関係でも、円安が進行していることから、中国との賃金格差が縮小しているためである。
日本の企業が、上海で支社を作り、ホワイトカラーの人材を採用するには月収で約1万元、さらに優秀な人材を引き抜く場合には、月収2万元以上が相場になっている。これを、2015年1月時点の為替レート(1元=19円)に換算すると、月収19万~38万円となり、日本人の賃金水準と大差が無くなっている。
しかし、為替のさじ加減だけで、海外に流れていた仕事が戻ってくるという簡単なものではない。新興国には、まだ安価な労働力が豊富にあり、単純作業やマニュアル化された仕事であれば、日本人よりも適性が高いこともある。
また、新興国側でも、為替レートが不利になることで、国際競争力が下がることは本意ではないため、金融緩和によって自国通貨を切り下げてくることも想定しておくべきだ。
さらに、未来の労働市場にとっての本題は、ITやロボットによる作業の自動化が革命的に進んでいることである。テクノロジーの進化は、人間の生活を快適にさせる一方で、長年にわたり定着していた労働者の職を奪うことにもなる。
2013年に、オックスフォード大学が発表した論文「The Future of Employment(雇用の未来)」では、既存の職業(702業種)に対して、コンピューターによる自動化の影響を分析したところ、これから20年以内に、いまの労働者が就いている職業の47%が消滅すると算定している。特筆すべきは、いま高年収を稼いでいるホワイトカラーの中でも、消滅する仕事が多く含まれていることである。
■The Future of Employment(雇用の未来)の原文レポート
今後の10~20年で、求められる仕事の内容や質は大きく変わることとなり、景気が上向いたからといって、単純に失業率や賃金下落に歯止めがかかることはないだろう。
しかし、消滅する仕事が増える一方では、新たに求められる仕事も多数登場してくるはずで、各国の政府も「未来の職業」についての予測を、様々な視点から行っている。
未来の労働市場は、「高度人材」「コンピューター(ロボット)」「単純作業者」という3階層によって構成されることになる。多くのホワイトカラーが失職するのは、彼らが関わってきたデスクワークの大半が、コンピューターに置き換えられるためである。
20年後に需要が最も減るのは、中間層(年収500~800万円)のホワイトカラー職であり、肉体労働や単純労働は、ホワイトカラー程には需要が減らないとみられている。ただし、ロボットや外国人労働者との競争で、賃金の単価は切り下がっていくことになる。
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■JNEWS会員レポートの主な項目
・人とロボットが分業する未来の労働市場
・中間層の仕事を奪うロボットテクノロジー
・ロボットの上位に立つ高度知的人材の特徴
・高度人材ポイント制の仕組み
・新職業を生み出す時代背景・7つのトレンド
・高齢化の健康管理と老化を遅らせるスペシャリスト
・パーソナル化していく仕事と生活スタイル
・製造業の枠組みを変革するメイカーズムーブメント
・多様な形で新興国→先進国へと向かうエリート労働者
・15年後に消滅する職業・需要が伸びる職業の特徴と賃金水準
・スキルシェアリングによる労働市場のセカンダリーマーケット
・生涯所得で比較することで見えてくる職業選択の損益分岐点
■この記事の完全レポート
・JNEWS LETTER 2015.1.19
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