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住宅市場に適用される残価設定ローンの開発と活用

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JNEWS会員配信日 2024/1/18

 人生の中で最も支払い負担が重い「住宅ローン」にも、残価設定型ローンを国が推進しはじめている。国土交通省は、持続性の高い住宅流通の仕組みとして残価設定型ローンの開発を、住宅メーカーや金融機関との協力により、2021年から進めている。

この背景にあるのは、日本では大地震にも耐えられる住宅を作る必要があるが、そのためには建築費が高額になってしまうこと。また、平均寿命が90歳に近づく中で、50年超の住宅プランが必要になってきたことがある。そこで、国が認定した長期優良住宅に対して、残価設定ローンを組めるようにする。

しかし、数十年先の中古住宅相場(残価)を予測することは難しいため、国の外郭団体である「移住・住み替え機構(JTI)」が住宅メーカーからの依頼により20年以上先の残価査定と買取保証を行い、残価設定した年数の経過後は、住宅を売却するか、大幅に引き下げられたローンを払いながら住み続けられる選択肢を住宅所有者に対して与える仕組みがスタートしている。

移住・住み替え機構(JTI)の残価設定型住宅ローン

2023年5月から三菱UFJ銀行、ミサワホーム、JTIが共同で開始した残価設定型住宅ローンは、住宅購入者が希望する残価設定年齢を決めることができ、その年齢に到達した時には、「買取オプション」と「返済額軽減オプション」のいずれかを選択することができる。

たとえば、35歳で5000万円の住宅を購入する場合、通常の住宅ローン(金利1.2%、35年返済)では、月額14.5万円の返済義務が70歳まで続くことになる。一方、残価設定ローンでは、残価設定年数を25年後と決めると、月額14.5万円の返済は60歳まで続くが、その時点で自宅を譲渡(売却)してローン残高を清算することができるのが買取オプションの選択肢だ。

もう一つの返済額軽減オプションでは、60歳以降はローン返済額が月額4.1万円に軽減され、85歳以降は残債に対する利子分の支払いのみ(月額およそ1万円)になる。この選択肢では、ローン債務が生涯にわたり続くことになり、死亡時に買取オプションが実行されて、家の売却とローン残債が清算される。これは、現代では相続されない家が増えていることに対応した仕組みとして開発されたものだ。

《JTI残価設定住宅ローンのシミュレーション》

JTIが残価査定する住宅価値は、非常に保守的な算定がされているため、将来の中古住宅相場が好調であれば、それよりも高い価格で民間業者に売却することも可能だ。また、減額されたローン利子を払いながら住宅所有を続ける場合でも、賃貸物件として運用する方法(マイホーム借り上げ制度)も用意されている。このように、住宅ローンの返済に多様な選択肢が広がることは、住宅の新築や建て替え需要を促すため、住宅メーカーにとってもプラスの効果がある。

ただし、JTIの残価設定ローンは、住宅購入から20~25年間は通常ローンと同じ月額返済をしていくことになるため、子育て教育費の負担が大きな30~40代でのローン負担は軽減されないことが欠点になる。子育てを終えた50代以降のライフプランをどのように描くのかにより、通常の住宅ローンと残価設定ローンのどちらが良いかの判断は違ってくる。

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