給与天引き型で提供する福利厚生サービスの開発市場
給与のデジタル化が進むことで、新たな決済手段として注目されているのが給与天引きサービスである。給与から料金が直接引き落とされる「給料天引き」は未回収率が最も低く、業者にとっては最強の決済手段であるが、日本では労働基準法による「給料全額払い」の原則があり、例外的な項目でなければ、給与から直接、商品代金やサービス料金などの天引き(給与控除)をすることは認められていない。
《給与天引きが認められる例外項目》
(1)所得税や住民税の源泉徴収
(2)社会保険料(厚生年金保険法、健康保険法等)
(3)労働保険料
(4)労使間で賃金控除協定を結んで、本人の同意も得ているもの
(例)
・社宅や寮の家賃
・社員食堂の代金(本人負担分)
・財形貯蓄
・労働組合費など
この例外項目(4)に着目した新サービスとして、パソナグループの株式会社ベネフィット・ワンでは、「給トク払い」という給与天引き決済サービスを2021年6月から開始している。このサービスは、労使間の合意を得た企業の社員向けに、ガス、携帯電話、アパート家賃、宅配クリーニングなど、希望するサービス料金の給与天引きをするものだ。
しかし、従業員にとって各種サービスの支払いを給与天引きにするメリットはどこにあるのか?従来、サービス業者が、顧客の銀行口座やクレジットカードから料金の引き落としを行うには、決済手数料や、引き落としができない場合の再請求費用を負担することを前提とした料金設定がされている。それを給与天引きに切り替えることでコストを軽減できるため、通常よりも割引した料金プランや特典を提示することができる。
ベネフィット・ワンでは、レジャー、旅行、育児、健康、介護、自己啓発などのサービス業者と提携して、従業員の福利厚生サービスを充実させたい企業との仲介を行う「ベネフィット・ステーション」を主力事業として展開しているため、今後は、その中から給与天引ができるサービスメニューを充実させていく方針だ。
《給与天引きサービスの特典例》
・電気料金が10%OFF
・ガス代が5%OFF
・アパート家賃が5%OFF
・保険料金が20%OFF
・携帯料金が10%OFF
・宅配クリーニングが初月50%OFF+毎月800円OFF
・オンラインで受けられるヨガサービスが月額50%OFF
・幼児向け知育玩具レンタルサービスが月額10%OFF
具体的に給与天引きがされる仕組みは、ベネフィット・ワンが契約企業の各社員が利用したサービス料金の集計をした給与控除データを毎月作成する。企業側は給与控除データをダウンロードして給与天引きをした後、その合計金額をベネフィット・ワンに送金する、という流れになっている。
さらに海外では、企業の福利厚生サービスとして「給与天引き型ローン」が開発されている。従来型の消費者ローンには高い金利が設定されており、一度利用すると多重債務に陥りやすい。これを解決するために、給与連動でローンの貸し倒れ率を下げ、低金利の融資を実現しようとするのが給与天引き型ローンの方向性である。
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