EV充電スタンドの採算構造とビジネスモデルの構築
日本にあるEV充電スタンドの大半は、自動メーカー4社(トヨタ、日産、ホンダ、三菱)と電力会社(東京電力・中部電力)の共同出資で設立した「日本充電サービス(NCS)」によってネットワーク化されており、EVユーザーは共通の「NCSカード(有料)」を持つことで、全国各地の充電スタンドを利用できる仕組みが構築されている。NCSカードには、「急速充電器用」「普通充電器」「急速・普通併用」の3種類があり、月額会費+充電時間(分単位)の従量料金が課金される体系になっている。
NCSのネットワークは、日産・三菱・トヨタ・BMW・フォルクスワーゲン・テスラなどが発行するメーカー系充電カードとも連携しているため、日本のEVユーザーは、いずれかの充電カードを所有して、全国の充電スタンドを利用している。
カードを持たずに、ビジターとしての利用も可能だが、その場合には、充電単価がかなり割高になってしまう。
一方、NCSネットワーク加盟の充電スタンド側には、充電収入として急速充電が1分あたり9.8円、普通充電は1.5円が分配される仕組みになっている。この単価設定により、急速充電スタンドがEV1台につき30分の充電をすると294円の収入だが、1日に充電できる台数は、ガソリンスタンドのように多くない。そのため、1日10台(月間300台)の充電稼働でも、月間8.8万円の収入にしかならない。
それに対して、急速充電スタンドの維持コストは、電気代、設備のメンテナンス費用、コールセンター費用、決済システムの通信費などで、月額20~30万円がかかっており、赤字を垂れ流している状態である。
ただし、これらの維持コストは運用の効率化により軽減できる余地がある。充電スタンドを設置する店舗施設では、充電収入以外で、集客力の向上による売上の上昇効果も狙えるため、トータルで充電サービスを黒字化できるビジネスモデルを構築することが、今後の課題であり、ビジネスチャンスにもなっている。
なお、日本充電サービス(NCS)は、「株式会社e-Mobility Power」という、東京電力60%、中部電力40%出資の新会社へ事業譲渡されることが、2019年10月に発表されている。今後のEV充電スタンド事業は、電力会社が先導する形で全国の設備をネットワーク化して、その傘下では自動車メーカーだけでなく、多くの企業がeチャージビジネスに参入できる方向性が描かれている。
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