written in 2012/8/14
事例:iFixit
通常、携帯電話は1〜2年でモデルチェンジしていくが、ユーザーの平均使用期間はおよそ35ヶ月(約3年)となっており、使用期間は年々長くなっていく傾向がある。スマートフォンの時代となり、端末の価格も高くなっていることから、「長く使いたい」というユーザーは多いが、画面の破損やバッテリーの消耗により、仕方なく買い換える人も少なくない。
そこで急成長してきたのが、iPhoneの修理サービスである。もともと、iPhoneは外部のメーカーから部品を調達して、中国の委託工場で組み立てているため、それと同じ部品さえ入手できれば、個人でも修理業を手掛けることは可能だ。
そこに着目して、米国で急成長しているのが「iFixit」という会社である。同社は2003年に、カリフォルニアの大学生が起業したもので、当初は、アップル製ノートパソコン「iBook」を修理するサービスからスタートした。しかし、部品を調達する手段が無かったため、ebayなどで中古の
iBookを安く落札して、それを分解した部品を再利用していた。そして、アップルがiPhoneを発売してからは、いち早くiPhoneの修理ノウハウを公開したことから、世界的に注目されるベンチャー企業となっている。
iFixit社のビジネスは、ユーザーから修理を個別に受け付けるのではなく、ユーザー自身が DIYで修理をするのに必要な「部品の販売業」に徹しており、修理の方法は無料で公開しているところが、特筆すべき点である。
同社は、iPhoneやiPadなど、アップルの製品を中心として、発売されたばかりの新製品を誰よりも早く手に入れて、徹底的に分解して、その経過を全てネット上で公開する。そして、修理や組み立ての難易度も表記した、誰もが使える修理マニュアルを無料で公開する。そこから、修理に必要な部品を購入してもらうことを収益モデルにしている。現在のiFixit社では、アップルが純正で使っているのと同じか、同規格の部品を調達することが可能になっている。
アップルでも、純正の修理サービスを提供しているが、端末を預けるとデータがリセットされてしまう問題や、部品を購入して自分で修理をすれば安く済むことから、同社のビジネスが成り立っている。今年9月に発売された「iPhone 5」の各部品も既に販売されており、背面のメインカメラは 39.95ドル、代替バッテリーは29.95ドルという設定。
ただし、ユーザーが自分で部品の交換をするのは難しいことから、iPhoneの修理を請け負う業者への需要も高い。iFixit社は、修理業者を立ち上げている人達も顧客としており、部品を大量購入することによる割引制度を設けている。主な海外へも発送されているため、同社の部品を使って、日本で修理業をスタートすることも可能だ。
《DIYによるiPhone修理の流れ》
(海外ネットビジネス事例一覧へ)
●iPhone修理ビジネスの業界構造
●iPhone修理ビジネス仕掛け人の存在とは
●アップル修理部品の調達ルートについて
●無料で公開される修理マニュアルの集客効果
●iPhoneアクセサリーを開発する起業家の資金調達方法
●アイデア商品を生み出す発想と行動力に学ぶ
●ステップ別に考える起業資金の調達方法とベンチャー事業
●ユーザー参加で需要を先読みするソーシャルプロダクト開
●設計図と模型を売ることでも成り立つモノ作り起業の方法
JNEWS
LETTER 2012.12.20
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