written in 2011/8/19
事例:Learning Today
米国の小学校では、生徒が自分のレベルの合った本を選んで家に持ち帰り、宿題として読書の練習をしている。そのため、各教室にはレベル別の本が収納されている。本の揃え方として、学校の予算が少ない場合には、年に数回、出版社と提携して「ブックフェア」を校内で開催する。
これはPTAの役員が書店の販売員に代わり、校内に一時的な本棚を設置して、各家庭に本を販売するものである。売り上げの半分が学校側の収入になり、その資金で、学校は新たな本を買うことができる。また、担任教師からは寄附のお願いリストが発表され、保護者がリストに上がっている本を購入して、教室に寄付をする仕組みもある。
読書訓練の成果として、低学年では月に一回、高学年では学期単位毎に一人ずつ、本読みと読解のテストを実施する。一斉に行うペーパーテストとは違って、手間のかかる作業だが、非常勤や補助の先生が担当し、個別に音読のテストを行っているのだ。このような個別に対応する授業形式が、米国では広がり始めている。
「カスタマイズ教育」の動きは、他の教科にもみられる傾向で、学校内のIT化やオンライン教材の普及ともリンクしている。
たとえば、算数や数学の宿題は、オンラインで出されることが普通になってきており、各生徒は、学校の先生からパスワード付きの宿題を受け取り、自宅のパソコンでWebサイトにアクセスすると、授業時間内にやり残した問題や、新たな宿題が表示されて、自分の理解度に合わせたペースで自宅学習に取り組むことができる。
指示を出す教師側では、手作業による宿題の添削をしなくても、パソコンが自動採点をしてくれるため、各生徒の苦手な箇所がどこにあるのかを容易に把握して、それを克服するための追加問題も自動で出題することができる。なお、自宅にパソコンが無い生徒に対しては、校内や公共図書館のパソコンが利用できるような環境も整備もされている。
《カスタマイズされたオンライン宿題の仕組み》
こうしたオンライン教材を制作しているのが、「Learning Today」のような会社で、公立や私立の「学校」を主な取引先として、生徒数に応じた教材のライセンス販売をしている。数学と国語の教材を、生徒1人が1年間利用する標準料金は65ドルの設定だが、クラスパックとして25名分の団体ライセンスを購入すると 1,220ドルで、生徒1人あたりの単価は 約49ドルの割引価格になる。
■Learning Today
http://www.learningtoday.com/
米国のオンライン教材は、個々のパソコンにソフトをインストールするのではなくて、専用のWebサイトにアクセスして問題を解くeラーニング方式が主流。これは、ソフトの不正コピーを防止して、教材の内容を随時更新しやすい利点の他に、「教材の年間利用料×生徒数×割引率」によるライセンスビジネスがしやすいこともある。学校単位となれば1校あたりで、ライセンス数(生徒数)が1千人前後の大きな契約になることも期待できる。
ただし、米国には様々なフリーソフトの教材も出回っているため、商用の教材は使わずに、学校の教師がその中から使えそうなものを見つけ出して、授業で活用しているケースもある。
(海外ネットビジネス事例一覧へ)
●段階別にステップアップする米国の読書教育
●書籍資産をレベルブックとしてDB化する事業
●読解レベルに応じた子ども向け書籍の売り方
●生徒の学力に応じてカスタマイズする宿題メニュー
●カスタマイズされたオンライン宿題の仕組み
●集団教育に馴染まないワケありのギフテッド
●“苦手”を克服させる新たな教育スペシャリスト
●米国のホームスクールと放課後教育市場
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●子供への投資として考える高級教育ビジネスの特徴と成長分野
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JNEWS LETTER 2011.8.19
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