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履歴書と就職面接から
ネットオーディション時代への変化
written in 2008/6/9
事例:TAXI.com

TAXI.com  Webデザイナーといえば若者から人気の高い職業だが、その平均月収は15〜30万円程度、年収で300万〜400万円台というのが一般的である。意外と安いと感じるかもしれないが、これはデザイナーとして求められる人材の平均年齢が低いことと、求人しているのは比較的規模の小さなWeb制作会社が中心であることに起因している。ところが、20代半ばで年収1千万円を超えるWebデザイナーも業界には存在している。その違いはどこにあるのだろうか?

デザイナーになりたい人の大半は、デザイナー職の求人募集をしている会社に応募をするのが一般的である。しかし通常の採用面接にパスして入社した場合には、年齢相応の給与が提示されるのが普通で、そこからいくらがんばっても20代で年収1千万円を超えることは、まずあり得ない。もちろん入社してからは、本人の努力によって給料は上がってくるだろうが、それもサラリーマンとしての常識的な昇給の範囲に過ぎない。

一方、20代で年収1千万円のデザイナーはどこが違うのかというと、業界での高い評価を獲得しているという点だ。これはフリーで活躍するデザイナーばかりでなく、社内のサラリーマン・デザイナーにも共通していることで、業界で名が通るような存在になれば、クライアントから名指しで仕事が発注されるようになり、会社はそんな逸材には転職や独立をされたくないから、彼の受注高に連動した特別な給与体系を提示したりしている。デザイナーに限らず、個人のセンスや才能が重視されるクリエイター系の職種では、往々にしてそんな“特別扱い”が許されている人達がいる。

それではどうしたら「業界での評価」を高めることができるのだろうか?その方法はアイデア次第で柔軟に考えることができるが、一つのやり方は、業界内で行われているオーディションやコンペに参加してみることだ。そこで入賞することができれば、それが「自分に対する業界の評価」へと結びつく。ところがクリエイター職の中でも、分野によってはそんな“腕試し”ができるコンテストは意外と少ない。

企業やクライアントにとっても、これからの仕事に必要なのは「特別な才能に秀でた人材」で、そのセンスによってオリジナリティの高い製品を作り、消費者の関心を惹き付けたいと考えている。ところが従来の求人方法では、そんな異才を発掘することが難しい。リクルート誌に新卒者の求人広告を出したとしても、型にはまった学歴や履歴書で応募してくる学生ばかりである。

そこで注目されているのが、芸能界や映画界が新人タレントを発掘するシステムである。大手プロダクションが新人オーディションを開催すれば、全国から何千、何万人という応募者があり、その中からわずか数名の“才能ある原石”を掘り出すことができる。しかも最近ではネットでオーディションを告知しやすくなったこともあり、タレント発掘のネットワークは国内ばかりでなく世界へと広がっている。

反対に、俳優や芸人志望の若者は、世界中のオーディションやコンテスト情報に目を通してチャンスの芽を掴もうとしている。少しでも名が通ったコンテストで自分が認められると、それが“業界の評価”として他の仕事にも結びつくためだ。そのため欧米では、タレントの卵に対してタイムリーなオーディション情報を提供したり、エントリーをサポートするビジネスが成り立っている。このような人材発掘〜応募のシステムは、企業の求人活動にも応用することができるもので、求める人材のタイプが高学歴型から才能型へシフトする中では、従来とは違った人材の選抜方法が必要になる。そこで展開されるビジネスについて見ていくことにしよう。
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この記事の核となる項目
 ●オーディションによる才能の発掘〜養成システム
 ●劇団四季と吉本興業による才能開発のビジネスモデル
 ●プロダクション型とは違うオーディション情報ビジネス
 ●有料会員制オーディション情報サービスの仕組み
 ●履歴書と就職面接からネットオーディション時代への変化
 ●評価業務も兼ねたオーディション代行ビジネス
 ●ユーザーからの人気度で決めるネットオーディションの力
 ●ビジネス界における人材オーディションの可能性
 ●少子化時代に加熱する若者の青田買いビジネスと奨学制度
 ●プレミア化する若者労働力に向けた求人戦略と人材ビジネス
 ●履歴書の大量送付が招くリクルート市場の変革と新ビジネス
 ●眠れる天才児を発掘・育成する教育ビジネスと潜在市場


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