written in 2007/4/2
事例:VIPdesk 他
少し前まで財布の中に入れて自慢できるカードといえば、ゴールドに輝くクレジットカード(ゴールドカード)であったが、近頃ではそれがプラチナカードやブラックカードに変わっている。プラチナ以上のクレジットカードは、自ら申し込むのではなくて、カード会社からのインビテーション(招待)を受けて初めて持つことができる。プラチナカードの年会費は5万〜8万円と、近頃では年会費無料のカードもたくさんある中で、高価なカードといえるが、それを持ちたがる人が増えている。最上級のブラックカードはともかくとして、プラチナカードは特に富裕層ということでなくても、頻繁にカードを利用する人ならば普通のサラリーマンでもインビテーションが届くところまで敷居は低くなっている。
これと安いカードとの違いは、「カード会社に選ばれた者」というステイタス感が高いのは当然だが、ただそれだけでは月々のコストが割高なカードをわざわざ所有するための理由としては弱い。では何に期待してプラチナカードを持つのかといえば、プラチナ会員だけに優遇された特別なサービスやもてなしである。たとえば、旅館やホテルを予約する際に、同じ宿泊費のままで部屋をグレードアップしてもらえたり、有名レストランへ優先的な予約が取れる、飛行機はエコノミークラス運賃でもビジネスクラスにアップグレードしてもらえる、ゴルフ場のプレイ代が無料になる、といった具合だ。飛行機でよく旅行や出張をする人であれば、8万円の年会費を払ったとしても上級サービスの特典利用で元が取れるという算段である。
そしてもう一つ、プラチナ以上のカードに付いている特徴的なものが「コンシェルジュデスク」である。これは会員専用の24時間コールセンターで、上記のようなサービスを利用したい時には、電話を一本かけるだけであとはコンシェルジュ(執事の意味)がすべて面倒な手配をしてくれる。最近では宿泊やチケットの手配も、自分でネット検索をすればオンライン予約をすることができるが、その際に何度も会員登録をしろと画面が要求してきたり、入力ミスでなかなか予約ができなかったりと、意外と煩わしくてイライラするものだ。
一方、コンシェルジュデスクでは、生身のオペレーターが丁寧に対応してくれて、難しい依頼をしても嫌がられることがない。「今日の夜に個室が空いていて、帰りにゲスト用のおみやげが用意できるレストランを探してほしい」「家族が急病で寝込んでしまったが、往診してもらえる医者を探せないか?」など、標準的な対応からは外れた依頼や相談にも応じてもらえる。もちろんすべての顧客に対して、そんな手間のかかる対応はできないため、上位の顧客のみに限定したVIP専用の窓口がコンシェルジュデスクなのだ。
■VISAプラチナカード
元々はホテルの利用客に対する高級な付加価値サービスとして提供されてきたものだが、近頃ではホテルやカード会社に限らず、優良顧客向けにコンシェルジュデスクを設ける動きが高まっている。トヨタではレクサス車の中にボタン一つで「レクサスオーナズデスク」を呼び出せる機能を搭載しているし、米国では1台2万ドル(2百万円)以上するような携帯電話がセレブの間で人気になっている。普通の携帯と何が違うのかといえば、専用のコンシェルジュデスクに繋がるようになっていて、いつでもオーナーの秘書役を担当してくれるのだ。
2百万円の携帯電話は極端にしても、忙しくて時間を無駄にしたくない人にとっては、コンシェルジュ付きのサービスには、旧来のようなセルフサービスより多少割高でも利用したいというニーズが次第に高まっている。それは特別な富裕層ばかりではなく、普通のサラリーマンや主婦の間にも潜在的なニーズはある。それに向けて企業はどんなサービスを仕掛けてゆけばよいのか?それを考えていくことにしよう。
(海外ネットビジネス事例一覧へ)
●決してノーといわないコンシェルジュデスクのサービス
●VIP顧客の専用窓口、コンシェルジュデスクの代行ビジネス
●コンシェルジュデスクを代行する業者の存在
●在宅スタッフによるコンシェルジュデスクの仕組み
●不足するコンシェルジュ人材の育成ビジネスと個人秘書の開業
●業界毎に専門化していくコンシェルジュサービス
●医療分野のコンシェルジュサービス
●住宅分野のコンシェルジュサービス
●コンシェルジュビジネスの要となる人材育成
●フリーとして独立するコンシェルジュ〜個人秘書へ
●共働き世帯が健康志向で選ぶパーソナルシェフサービス
JNEWS LETTER 2007.4.2
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