written in 2006/7/24
事例:H3.com
近頃の小売店や飲食店を見ていて気付くのは、アルバイト店員の年齢が高齢化していることである。本来なら十代の学生がやるようなアルバイトを年配の女性がやっている光景をよく見かける。経営者に話を聞くと、求人広告に応募してくるのは三十代、四十代以降の人が多く、それよりも若い人材はなかなか集まらないという。深夜のコンビニ店員の顔ぶれからは、若者労働力の減少による影響がリアルに感じ取れる。
総務省が定期的に行う労働力調査からは、景気の回復を受けて小売業やサービス業での人材採用が増えていることがわかる。しかし店の経営者はそれに満足しているわけではなく、もっと若い人材を求めている。特に接客業では年配者よりも若者を雇うほうが顧客からの印象は良く、それが売上にも結びつくためだ。それぞれの職種には必ず適正年齢というものが存在していて、レストランのウエイトレスならば、二十代前半の女性を“看板娘”にしないと店はなかなか繁盛しない。他の職種についてもしかりだ。
アルバイトの平均時給額は、関東圏では既に1000円を超えていて、高い店では時給1300円以上を提示して若い人材を募集している。しかし時給を高くすれば若者が集まるというわけではなく、ようやく採用してもすぐに辞めてしまうケースが多いという。飲食店や小売店のように、これまで若者が主な働き手だった職場では、いま深刻な労働力不足に見舞われはじめている。
今後は少子高齢化の進行でさらに若年労働力が減少していくことは間違いない。その解決策を数字だけで捉えるのなら、高齢者の労働力で不足分を賄えばよいということになるが、実際にはそれほど簡単なものではない。これからの労働市場では、若手人材に対して特別なプレミア価値が付くことも予測されていている。しかし彼らを企業が採用するためには、報酬だけを釣り上げれば良いというわけではなく、彼らの価値観やワークスタイルに適したリクルート活動や就労体系を作る必要がある。フリーターとしての働き方を覚えた若者が、景気が回復したからといって正社員として喜んで就職するかといえば疑問だ。
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JNEWS LETTER 2006.7.24
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