世界と比較した日本人の幸福度とワークライフバランス
日本でも働き方改革が進む中で、不当な長時間労働は少なくなるだろうが、業務の自動化が進むことにより、人間が担当する仕事は、さらに高度な知識やスキル求がめられるようになるため、仕事へのストレスはこれまでよりも重くなる。
従来の働き方では、「高年収を稼ぐこと=成功」という価値観が強かったが、精神的にハードな仕事環境の中では、報酬と引き換えに犠牲にするものとの折り合いをどのように付けるのかで、幸福度は変わってくる。
OECDでは、生活の豊かさや幸福度を示す新たな指標として「Better Life Index」を作成して、OECDに加盟する36カ国間の比較を行っている。その判断基準としているのは、「住宅・収入・雇用・コミュニティ・教育・環境・市民活動・健康・生活の満足度・安全・ワークライフバランス」の11項目で、そのトータルで判定した日本の幸福度は、36カ国間中の23位と低いランクになっている
日本の家計が保有する総金融資産は「1829兆円」と言われるが、平均世帯の可処分所得(税金等を差し引いた手取り年収)は28,641ドルで、OECD諸国の平均値(30,563ドル)を下回っている。
これは、貧富の格差が大きいことを示しており、日本では人口の上位2割が、下位2割の6倍以上の収入を得ている。しかし、平均的な世帯でも、より高い生活水準を目指そうとする気持ちが強いため、高い家賃や住宅ローンに負われて、日々の生活は苦しくなっている。また、低賃金の仕事でもストレスを感じることは多く、自分自身を「幸せ」とは感じていない。
米国は日本以上に貧富の差が激しく、長時間労働をするビジネスパーソンも多いが、可処分所得はOECD諸国でトップとなっているため、高収入を稼ぎたい人にとっては、夢を実現できる国でもある。
【ワークライフバランスと幸福度】
一方、幸福度のランキングが高いのは、ノルウエイやオランダなどの北欧だが、それらの国に共通した特徴は、ワークライフバランスの満足度が高いことである。
ワークライフバランスの項目で最高点を獲得しているオランダは、可処分所得では日本と同水準だが、フルタイムでなくパートタイムで働く比率が世界で最も高い。しかし、パート労働者の立場が、正社員よりも格下とみられることは無く、時給換算でみた給与水準や福利厚生の条件は、正社員と同等になるように法制化されている。そのため、女性の就業率は62.5%と、日本(47.7%)を大きく上回っている。
さらに、2016年にフレキシブル・ワーク法では、労働時間の延長や短縮、勤務する時間帯、勤務場所についても、従業員から申請する権利が与えられている。そのため、男性でも、出産や育児、介護など家庭の事情によって柔軟な働き方をすることができる。会計士やエンジニアのような専門職の中でも、フルタイムではなくパートタイムの働き方を希望する者が多く、不定期なリモートワークを含めた在宅勤務者の割合も30%を超してきている。
オランダでは、1日に12時間、週に最長60時間までの労働が認められているが、その中で何時間働くのかは、自身の健康状態や家庭の事情などを考慮して、自分の裁量によって決めることができる。また、パートタイムワーカーからフリーランス(個人事業主)へと起業して、元勤務先の会社から仕事を請け負うスタイルも定着している。
外国人移住者に対してもオランダは寛容で、世界でも珍しい「フリーランスビザ」を発行している。米国や日本で発行される就労ビザは、入国時に雇用主が決まっていることが条件で、その会社に解雇されると在留資格も失うリスクがあるが、フリーランスビザは、事業に適したスキルや実績を書類として提出できれば、個人事業主として現地で起業することができる。
翻って、日本の労働者は、「働く時間と場所」を自分の裁量で決めることができず、給料が伸びる見込みも少ないが、仕事の責任は重い、という3重苦によって、強いストレスを抱えている。仕事に対する幸福度とは、報酬の条件だけではなく働き方を自分で決められる“自由度”によって、大きく変わるものである。
こうした、新たな価値観は、実力の高い人材の中から広がりはじめており、サラリーマンからフリーランスへと転身して、現状の収入は維持しつつ、自然環境が豊かな地方移住を実現する者も、水面下では増えてきている。
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