AIが普及した社会で、最終的な人間の役割として残るのは、AIの判断に対して最終的な意思決定をして、責任を取る仕事だと言われている。その時には労働時間ではなく、リスクや責任の重さに対する対価として報酬額が算定される(JNEWSについて
AI社会で変わる働き方と幸福の価値観

JNEWS
JNEWS会員配信日 2018/12/28

 AIを中心としたテクノロジーの進化は、労働市場に影響を与えることは間違いなく、これから衰退する職業と、新たに生まれる職業との二極分化が進むことになるだろう。具体的な有望職種はAIの成長と共に変化していくが、普遍的な人間の役割として残るのは、AIの判断に対して最終的な意思決定をして、責任を取る仕事だと言われている。

たとえば、AIの画像診断により、ガン細胞を発見できる精度は99.9%に高めることはできても、0.1%以下の確率で生じる誤診に対して責任を負うのは、医師の役割になる。その上で、AIの活用によって検診の効率をどこまで高めるのかは、各病院や医師の判断によっても変わってくる。つまり、高年収を稼ぐ医師は、それだけ高いリスクを背負うことになる。

このような、報酬とリスクの特性は、他の職種にも共通したものになる。従来の賃金体系は「労働時間×時間単価」によって年収相場が決められているが、AIが人間の作業を代行する時代には、責任の重さ(リスクの高さ)に応じた報酬制度のほうが、理にかなっている。


会社の中で最も高い給料を得ているのは「社長」だが、これは社内で最も長時間働いたからではなく、最も重い責任を背負っていることへの報酬といえる。それと同様に、責任の重さと賃金とを連動させた報酬体系を、管理職や専門職、さらに一般の職種にも適用することは、多様な立場で働く従業員とAIロボットが共生する職場の中では支持されやすい。

リスクと連動した報酬体系の具体的なイメージとしては、大手の商社やメーカー企業が、海外駐在員に対して支給する「ハードシップ手当」が参考になる。海外での仕事は、赴任する国の自然環境、治安、医療や衛生環境、交通インフラ、教育水準などによっても、身体の負担や精神的なストレスは異なるため、その難易度に乗じて算定したハードシップ手当を支給することで、駐在員のモチベーションを維持している。ただし、各国の治安や衛生環境は変化していくため、ハードシップ手当の基準とする指数は定期的に更新していく必要がある。

これについては、各国、各都市のリスク状況を常時モニタリングして集計した「ハードシップ指数」を、海外への駐在員を多数送り出している企業に対して提供するビジネスが成り立っている。

《駐在先別ハードシップ手当の水準》

 日本でも働き方改革が進む中で、不当な長時間労働は少なくなるだろうが、業務の自動化が進むことにより、人間が担当する仕事は、さらに高度な知識やスキル求がめられるようになるため、仕事へのストレスはこれまでよりも重くなる。

従来の働き方では、「高年収を稼ぐこと=成功」という価値観が強かったが、精神的にハードな仕事環境の中では、報酬と引き換えに犠牲にするものとの折り合いをどのように付けるのかで、幸福度は変わってくる。

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