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少子高齢化で求められる ワークスタイル改革の切迫した事情 |
written in 2009/5/29
脱サラをして起業するのに夢を抱くことは昔も今も変わらないが、起業の理由や目的には傾向の変化がみられる。十年前なら億万長者になりたいという野心家も少なくなかったが、最近ではもっと現実的に幸せな生活を送るための起業を目指す人が増えている他、子育てや介護のためにサラリーマンとしてのキャリアを捨てて自営の道を選ぶ人もいる。
欧米では、仕事と生活の調和がとれた「ワーク・ライフ・バランス」を重視する風潮が高まっているが、これは「仕事はそこそこで、後は優雅にファミリーでレジャーを楽しむ」といった安易なことではなく、少子高齢化で家庭環境が変化してきたことにより、仕事と家事が両立できないという切迫した事情がある。
家族の構成人数が少なくなれば、一人あたりが担当しなくてはいけない“家庭の仕事”も増えるわけで、米国では労働者の約8割が差し迫った家庭内の仕事を抱えており、その大半は子育てと親の介護だと言われている。米国は日本よりも女性の社会進出が早かったために、子育てを犠牲にしないワークスタイル(働き方)については1980年代から色々と研究されてきている。
さらに介護についても、米国内で7500万人いるベビーブーマー世代が60歳代に入ってきたことで、その子供達(現在の30代)は、今後の10〜20年で深刻な介護問題に直面することが予測されている。高齢化の状況からすると、日本もまったく同じ問題を抱えているが、その準備はほとんどされていないのが実態である。
働く現役世代にとって、老親の在宅介護に本気で取り組もうとすれば想像以上の負担になることは間違いない。たとえば、親が重い後遺症で寝たきりになり、24時間態勢の世話をするには3人の介護者(8時間の介護×3交代)が必要になり、一人の高齢者を一人で介護できるわけではないのが盲点だ。その仕事をすべて民間のヘルパーに頼もうとすると、1時間あたり2千円が平均単価として、1日で4万8千円、1ヶ月で144万円もの費用がかかる。
その金銭的な負担を避けるために介護保険制度が導入されてはいるが、最も厚いサービスが受けられる「要介護5」の認定を受けたとしても、保険でヘルパー料金を賄えるのは一日に3時間程度と上限が決まっており、それ以外の費用は各家庭が自腹で何とかしなくてはいけない。経済的にそれが無理であれば、身内の誰かが、勤めている会社を長期間休んで介護にあたるしか方法が見あたらない。介護が数ヶ月で終わると最初から決まっていれば、それも可能かもしれないが、寝たきりになってから要介護の平均年数は約3年、長ければ10年以上にわたることもあるため、世話をする立場の家族は、休職ではなく、辞職をして介護中心の生活を送らなくてはいけないケースが増えている。
(女性のための起業テーマ一覧へ)
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●1人の高齢者を3人で介護する現実
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JNEWS LETTER 2009.5.29
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