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在宅介護セルフサービス時代の幕開けと 新たな専門職の役割 |
written in 2009/4/16
仕事をできるだけ効率化したいニーズは日本の介護業界でも高くて、それをしなくては業界の働き手が無くなってしまうという焦りがある。介護業界の離職率は非常に高くて、正社員の約半数、非正社員スタッフの約7割が3年以内に辞めてしまう。そのためプロとしての人材が育っていかないという状況で、介護業界の枠組み自体が破綻しかけている。
離職の理由としては、正社員でも月給が平均で20.5万円と安いことと、老人ホームでは夜勤もあって労働の負担が大きいことなどが挙げられている。介護の仕事は、本来なら家族がやるべきことを施設のスタッフが担当するため、丁寧にやれば仕事量に際限はなく、それをすべて人件費(給料)として算定することは現実問題として不可能だ。スタッフに肉体労働の負担が増えれば、それだけ労働効率は落ちるために、時間あたりの賃金単価は下がってしまう。
それでもお構いなしに、介護を依頼する側には「介護保険料を払っているのだからワガママを言っても当然」という風潮ができてしまい、介護報酬の上限が決められている中でも、サービスをどこまでも求められてしまう。現場関係者からは、「介護保険制度ができたことにより、家族が老親介護の義務を放棄するようになってしまった」という指摘も聞こえる。
ところが、老齢福祉の先進国が多い欧州では介護サービスに対する考え方も異なっていて「介護は原則として家族が行なうもの」であり、その手助けとなるように公的な介護手当が支給されている。その資金で、家族が対応のできない部分だけを介護業者に依頼するという発想である。保険ですべての介護サービスが賄えるというわけではないため、業者に依頼する際には自ずと介護費用を意識するようになるため、介護スタッフに仕事が丸投げされて過度の負担がかかってしまうことは避けられるのだ。
《日本型介護サービスの発想》
《欧米型介護サービスの発想》
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JNEWS LETTER 2009.4.16
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