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肥大化する生協組織に食い込む 共同購入グループの作り方 |
written in 2008/3/23
ガソリンの価格が高騰すると、さすがに週末の長距離ドライブは控えようかという気にさせられる。日常の仕事や生活にクルマの利用が欠かせない人ならば、できるだけ安く給油できる方法はないものかと、ポイント割引を期待したクレジットカードでの支払いや、プリペイドカードの購入など、あの手この手を使って1円でも節約したいと考えることだろう。
その中で「ガソリンを共同購入する」という方法がある。これはガソリンの購入者が一堂に集まることで、ガソリン販売店から特別な割引価格を引き出すことができる。わかりやすい例では、生協や労働組合と提携したガソリンスタンドを会員利用すると1リットルあたり3円程度の割引価格が適用される。これは古くからある仕組みだが、近頃ではあまりに石油の価格が高騰したことから、再び共同購入が見直されてきている。
これをもっと本格的な事業として展開しているのが、米国にみられる灯油の共同購入ビジネスである。消費者は年間25ドルの会費を払って「HEAT USA」という団体のメンバーになると、同団体と提携している 約200の石油販売業者から1ガロンあたり15〜25セントの割引を受けられるようになり、年間では250〜400ドルの灯油代(暖房費)を節約することができる。現在では全米で約4万世帯の家庭がHEAT USAに加入しているために、購買力が強い消費者団体として石油業界でも無視できない存在にまで成長している。
石油の話に限らず、共同購入やグループ買いというのは、意外とこれからの時代にふさわしいスタイルだ。毎朝ポストに届く新聞には分厚い広告チラシが折り込まれているが、これは小売業者が新規の顧客を呼び集めるために欠かせない宣伝活動の一つ。しかしそのための宣伝コストは、商品の価格に転嫁されて実質的には消費者が負担している。それなら「自分たちで購入仲間を集めるから、その分だけ値引きをしてくれ」という交渉が成り立つ。幸いにして、現代では消費者がネットを介して仲間を募りやすくなっているため、様々な購買ネットワークを作ることは可能である。
また高齢化社会という観点からも、新たな購買ネットワークが欠かせない。高齢になると遠方まで買い物に出かけることが次第に困難になってくるために「店に買い物に行く」以外の購買方法が必要になる。そのためにネット通販を利用するのも一つだが、これは比較的高額な商品でないと送料分が割高になってしまい、日常的な買い物については不向きだ。そこで求められるのが宅配のためのネットワークで、同じマンション内や近隣の住民達が何名以上集まって申し込むと、わざわざ店まで買い物に出かけなくても、玄関先まで配達してもらえるのであれば便利だ。宅配に応じる小売業者の立場でも、購入者が“グループ”として複数いれば、配達にかかる負担分もペイできる見込みが立つし、店売りより割引価格を提示できるかもしれない。
さらにもう一つ、環境ビジネスからのアプローチでも消費者をグループ化する仕組みが有効だ。従来のように個々の消費者が商品を購入するのではなく、グループを作って商品を共有するスタイルにすると、環境配慮型のサービスになることに加えて、レンタル方式のような新たな収益構造を築くこともできる。商品の共有を目的とした集まりは“シェアリンググループ”として欧米で広がりを見せている。折しも日本では、ギョーザ事件に端を発して肥大化しすぎた生活協同組合連合会(会員数約1700万人)への信頼が揺らいでいることもあり、それ以外でもっと身軽な共同購入グループが求められる気運が高まっている。
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JNEWS LETTER 2008.3.23
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