睡眠時無呼吸症候群(SAS)の潜在患者は国内だけでも300万人以上とみられているが、ほとんどの人が症状を自覚していない。スマートフォンで睡眠中の様子を検出できるアプリは保険適用の対象になる可能性があり、医療メーカーの買収対象としても浮上している。
慢性病の潜在患者を減らす予防テクノロジー開発

JNEWS会員配信日 2018/3/31

 これからの医療テクノロジーは「予防系」「治療系」「診察、診断系」「リハビリ系」という4つのカテゴリーに分類することができる。

米国では、人工心臓や人工関節、糖尿病患者へのインスリン投与を自動化できるウェアラブルデバイスなど、治療系のテクノロジーを手掛けるベンチャー企業が多いが、これは法的な認可を受けて、製品が実用化された時のリターンが大きいためである。ただし、人体に触れる医療機器は安全性への配慮から、承認が下りるまでの期間が長く、トラブルが起きた時には訴訟のリスクもあるため、日本ではマイナーなテーマになっている。

《治療系テクノロジーの承認プロセス》

一方、日本のスタートアップでも手掛けやすいのは、人体に直接触れることがない、予防系のオンラインサービスである。厚生労働省では、医療費軽減のポイントとして、生活習慣病をはじめとした慢性疾患の抑制をテーマに掲げており、その具体的な項目を、診療報酬改定の中にも盛り込んできている。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の潜在患者を発見することは、その一つと言われている。この症状は睡眠中に何度も呼吸が止まるもので、SAS患者の95%がいびきをかいている。睡眠中に無呼吸(10秒以上呼吸をしない)の状態が何度も続くことで、眠りが浅くなり、高血圧、糖尿病、脳卒中、心筋梗塞などの発症リスクが、健常者と比べて2~3倍高くなることも明らかになっている。

SASの潜在患者数は、日本国内で300万人以上とみられているが、ほとんどの人が症状を自覚していない。それを発見して適切な治療を行うことは、重大な病気を予防することに繋がる。

SASの症状を正確に検査するには、数日の入院をして睡眠中の脳波・心電図・呼吸回数、血液中の酸素量などを測定する必要があるが、手軽な簡易検査としてスマートフォンのアプリを活用することもできる。イスラエルのテルアビブ大学出身の研究者が開発した「SleepRate」は、市販されている心拍数のトラッキングデバイス(Apple Watchなど)と接続する形で、睡眠の状態をモニタリングできるスマートフォンアプリだ。

ユーザーは、このアプリを毎晩セットすることで、レム睡眠とノンレム睡眠のサイクルを把握したり、いびきの検出をすることができる。医療機器としての承認は受けていないため、検査や治療用のデバイスとは違うが、睡眠改善アプリとして米国向けに年間9.99ドル、34.99ドル、89.99ドルのプランで販売されている。
不眠症に悩むユーザー層は、医療業界にとっても、できるだけ広く囲い込みたい潜在顧客であることから、このようなアプリ開発会社は買収候補に挙がりやすい。(この内容はJNEWS会員レポートの一部です。正式会員の登録をすることで詳細レポートにアクセスすることができます記事一覧 / JNEWSについて

SleepRate

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