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  医療人材不足から、フィリピン看護師の候補生を受け入れる施策が2008年からスタートしているが、実際に看護師の資格を取得できたのは数名しかいない。その理由は、日本の試験制度が外国人に対応していないことによる。
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フィリピン看護師は、
なぜ日本を見捨てて中東へ向かうのか?
written in 2011/2/15

 外国人看護師、介護士の“候補者”受け入れとして、2008年に第一陣として約4百名が来日している。彼らの成否は、日本の国家資格を取得することに懸かっているが、2009年と2010年、2回の看護師試験で合格できたのは、外国人受験者254人中で僅かに3名しかいない。合格率でいうと 1.1%という厳しさだが、同じ試験の日本人受験者による合格率は約90%、という大差が付いている。

《看護師国家試験の合格率推移》

  

その理由は明白で、インドネシアやフィリピン人でも、日本人と同じ、日本語による試験問題を受けなくてはいけないルールになっているためだ。もともと彼らは、現地で大卒以上の学力があり、看護の実務経験を持つスペシャリストとして来日しているため、専門的な知識については、日本の看護学生と同等か、それ以上の実力があると言われている。試験問題を、彼らの言語に翻訳した上で受験できるようにすれば、合格率は飛躍的に上昇することは間違いないが、日本では今のところ、外国人向けの配慮はしていない。

さらに、介護福祉士の国家試験に至っては、日本の介護施設で実務経験を3年以上積むことが受験資格になっているため、外国人介護士の候補者が、入国して在留資格のあるうち(約4年)に受験できるのは1回限りで、それで合格できなければ帰国するしかない。

■介護福祉士の受験資格について(社会福祉振興・試験センター)
  http://www.sssc.or.jp/shiken/

《外国人介護人材が日本で就労するタイムテーブル》

  

日本の表向きは、国際提携の建前により、インドネシアやフィリピンに限らず、タイやベトナムともEPAを締結して、看護・介護人材の受け入れ枠を増やしていく方針をアピールしているものの、実際には、在留資格の緩和や、国家資格のハードルを下げないことで、移民労働者の流入を食い止めているように見える。これでは、「人材移動の自由化」へ向かっていく今後の国際社会で、日本は孤立したままになってしまう。

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この記事の核となる項目
 ●医療介護人材の国際調達ビジネス
 ●外国人看護・介護人材が日本で就労するまでの業界構造
 ●外国人介護人材が日本で就労するタイムテーブル
 ●言葉の壁を盾にした日本の外国人就労政策
 ●中東へと流れるフィリピンの看護人材
 ●なぜ中東では外国人材の就労受け入れに前向きなのか?
 ●フィリピンと日本が同じ土俵で闘う米国ナースの座
 ●米国で看護師として働くまでのステップ
 ●国から自由貿易圏へと広がる新商圏
 ●経済連携を含めた世界商圏の市場規模
 ●日本のリタイア世代を狙うASEAN諸国のビザ政策
 ●年金生活者を受け入れるマレーシアの狙いとは
 ●1万円の海外旅行を実現させる格安航空会社(LCC)の衝撃
 ●黒船に乗った新興国の知的ワーカーが迫る労働市場の開放政策
 ●日本からの中国ネットビジネス参入に向けた視点の磨き方
 ●隣の外国人が日本で働いているカラクリと業務請負ビジネス
 ●ネットによって国境を楽々と越えるサービス貿易の動向と影響


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