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医療と農業で広がる会員限定サービスの
ビジネスモデル
written in 2009/10/8

 難しい病気になれば、できるだけ名医のいる病院で診察を受けたいと考えるのが患者の心理だろう。しかし病院が名医を雇うには、平均よりも高い給料を払う必要があるし、その名医が対応できる患者の数にも限界がある。そこで質の高い医療サービスを提供することを目的に、会員制を導入した病院が世界では増えている。

米国では公的保険制度が不十分なため、各家庭が経済状況や職業に応じて民間の医療保険に加入しているが、これは日本のように、全国どこの病院でも保険適用のサービスを受けられるものではない。保険団体は、加入者(会員)が毎月納める保険料(会費)を、契約している特定の病院や開業医に前払いしておき、メンバーが来院した時には、無償または割引料金で診察をする仕組みになっているのだ。このような会員制の保険団体は「Health Maintenance Organization(HMO)」と呼ばれており、米国内には大小を合わせて 600団体以上が存在している。

その中でもHMO大手の「Kaiser Permanente(カイザーパーマネンテ)」は、カリフォルニア州を中心に9つの地区を対象にした医療サービスを展開しているが、一般家庭の他に、企業や大学などを団体加入の窓口にして 800万人以上の会員を獲得している。会員は、カイザーが契約するメンバー限定の総合病院や提携先クリニックで保険適用の医療が受けられる他、ダイエットや生活習慣病予防などの健康管理サービスも利用できる。

《HMOによる会員制医療サービスの仕組み》
    HMOによる会員制医療サービスの仕組み

病院側にしてみると、HMOの医療システムは、素性がわかっている会員に患者を限定することができ、しかも診療費は会員数に乗じた固定額が前払いで支払われるために、経営を安定させることができる。一方、患者側は、HMOに加入して月々の会費を払っていれば、病気の際に高額の請求書を心配することなく、設備の行き届いた病院で、掛かり付けの医師に面倒を見てもらえるのが利点である。

しかしHMOにも欠点が無いわけではない。それは加入者の医療費はHMOがすべて管理しているため、病院が治療方法を決める際には、HMOの方針に従わなくてはならないのだ。たとえば現場の医師が、糖尿病の会員患者に対して効果の高い新薬を使おうとしても、それがHMOのプログラムで“予算オーバー”と判定されると、患者が希望していても使うことができない。また、他に評判の良い名医がいるからと言って、患者が自由に主治医を変更することもできない。

HMOは病院との折衝により、できるだけ無駄な医療費を抑えて、患者の金銭的な負担を軽減することが役割だが、その管理が行き過ぎて、重病でも会員プログラムで決められた内容の医療しか受けられずに命を落とした患者の遺族が、HMOに対して訴訟を起こしている事例もある。

そこで最近では、保険に加入していても、患者の希望により自己負担額を増やして高度な治療が受けられる「Preferred Provider Organization(PPO)」という方式も登場している。PPOも契約先の医療機関が決まっている会員制の医療サービスだが、患者が選択できる医師や治療法の自由度が高いことと引き替えに、診察時の自己負担額がHMOよりも高くなるのが特徴。

いずれにしても、米国の医療サービスでは“会員制”が主流になっている。日本でも高齢化で急増する患者に対して、医師や施設の枠数は不足してきていることから、割高な費用を払ってでも優先的に高度な医療が受けたいという人に向けて、会員制の医療サービスが支持される土壌がある。日本の公的医療にプラスαする形で、どんな会員システムを考案するのかが、今後のビジネステーマといえる部分だ。
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この記事の核となる項目
 ●VIP客だけを相手にする会員制医療サービス
 ●顧客を限定した米国の会員制病院の収益構造
 ●会員組織を形成する農業ビジネスの仕組み
 ●農家と消費者による提携ビジネス
 ●メンバーシップ機能をビジネスにする発想
 ●教会が導入するオンライン会員制サービス
 ●オーナシップからメンバーシップへ変わる信用の築き方
 ●オープンにされない紳士クラブの存在とインナーサークル
 ●消費者をオーナーとした会員制市民農園の新事業プラン
 ●クレジットカードのポイント特典は誰が払っているのか?
 ●変化する宗教観の中で求められる、お寺の新たな収益モデル
 ●格差社会に仕掛けられた"勝ち組"の虚像と真の顧客ターゲット
 ●優良顧客を主体にニーズが高まるプライベートサービスの波


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