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  先発薬よりも安価なジェネリック薬を使えば、公的保険の負担を抑えられるが、医療の現場では人気が今ひとつ。処方箋1枚あたりの料金は、薬価だけでなく、他にも各種の手数料が含まれている。
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処方薬の流通経路にみる
医療業界の商慣習と価格崩壊の夜明け
written in 2012/2/2

 誤解の無いよう先に伝えておくと、日本の医療サービスは世界でトップクラスの水準にある。その裏側では、医療の現場に従事する医師、看護師、その他の専門家やスタッフの献身的な努力があることは言うまでもない。

ただ、日本の医療制度は、国民の給料や所得から毎月天引きされる健康保険料によって、大方が賄われているため、一度の診療でどれだけの費用がかかっているのかについては、他国よりも無頓着な面がある。

たとえば、病院に通院した際に処方される、薬代の合計や内訳を正確に把握している人は少ないが、厚生労働省によると、処方箋1枚あたりの調剤医療費は、平均で約8千円。さらに、病気や怪我の症状によって、薬の値段は高くなる。高血圧や糖尿病のように、定期的な投薬が必要な場合には、薬代をできるだけ安く抑えられる方法を考えることも大切だ。

そこで、新薬(先発薬)の特許が切れた後、同じ成分の後発薬(ジェネリック薬)を使う方法があることは、広く知られている。薬の種類によっては、先発薬→後発薬への切り替えにより、薬の仕入値は1/3にまで下がると言われている。

しかし、実際にはそこまで薬代が下げられるわけではない。それは、公的保険と患者が分担している「調剤医療費」は、薬の代金(薬剤料)と、調剤の技術料をセットにして算定されているためで、処方箋1枚の内訳は以下のようになっている。

《処方箋1枚あたり調剤医療費の内訳(平均値)》

  

しかも、ジェネリック薬は先発薬と成分は同じでも、取り扱いが若干違うことによる「後発品調剤加算料」や、服用の方法について説明する「後発品情報提供料」を加算することが認められており、トータルの金額では先発薬との価格差が、あまり変わらないばかりか、逆に割高になってしまうことさえある。

また、一種類の先発薬に対して、ジェネリック薬は多数のメーカーが製造しているため、どのメーカーの薬を使うのが、患者にとって最良なのかの判断は難しくて、医師が先発薬以外の処方を嫌うケースや、薬局でも複数の在庫を取り揃えなくてはいけないため、ジェネリック薬によって医療費を引き下げることは、思うように進んでいないのが現状だ。



 公的保険が適用される同じ品名の処方薬なら、患者はどの病院や薬局に行っても値段は同じはずだが、水面下では処方薬の値崩れが起こっている。これは、医薬業界の競争から生じるリベート構造が関係している。

国による薬価の引き下げが行われると、病院や薬局は、できるだけ安くクスリを仕入れないと利益が出ないため、複数の卸業者を競わせて、最も良い条件の業者と取引をするようになる。

そのため卸業者は、取引先に対して、ほとんど利益ゼロでも医薬品を販売するが、取引量が増えると、メーカーからのリベートが支払われる業界構造になっているため、なんとか帳尻を合わせることができる。また、病院・薬局も大量にクスリを仕入れるほど安価になるため、実需よりも多めに購入していることが多い。

このようにして生じた過剰な在庫は、「医薬品の現金買い取り→再販売」という二次マーケットを成立させることになり、処方薬の定価や卸価格は形骸化しつつあるのだ。

《現金問屋による医薬品の二次流通ルート》

  

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この記事の核となる項目
 ●1回8千円、クスリはなぜ高いのか?
 ●処方箋1枚あたり調剤医療費の解説
 ●水面下で起こっている医薬品の値崩れ
 ●最安ルートを患者が探す米国のクスリ事情
 ●オンライで調達する処方薬の購入ルート(米国)
 ●不足する医療人材の紹介ビジネスモデル解説
 ●看護師に起こるフリーランス化の動き
 ●フリーランス看護師を支援する「レジストリー」とは
 ●シニアケアサービスのフランチャイズ展開モデル
 ●FCチェーン化するクリニック経営/医師とオーナーの分業
 ●自費で雇う医療コーディネーターへの期待と先進医療の動向
 ●平均より長く生きるためにはコストがかかる長寿の傾向
 ●保険に頼らない自由診療の人気にみる医療・介護業界の行方
 ●介護保険の陰に隠れた家政婦サービスの業界構造と潜在市場


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JNEWS LETTER 2012.2.2
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