脳トレブームを巻き起こした東北大学、川島隆太教授と公文は、高齢者の認知症予防となる学習療法を共同開発して「脳の健康教室」として展開。教室の主催者は主に地方自治体となっており、公文は教室運営に必要な研修や教材の提供を行う(JNEWSについて
脳トレで認知症予防をする「脳の健康教室」

JNEWS
2019/4/17

 内閣府の高齢者白書によると、日本国内で認知症の患者数は2012の時点で462万人、65歳以上の高齢者の7人に1人(15%)が該当しているが、2025年には700万人(高齢者の5人に1人)にまで増加することが予測されている。認知症患者の治療やケアにかかる費用は、通院治療の場合で1人当たり月額3万9,600円、入院治療になると月額34万4,300円と試算されており、国や自治体の大きな負担になっている。

そこで認知症の予防対策が、新たな高齢者向けサービスとして事業化されている。公文(KUMON)では、かつて大ヒットした「脳を鍛える大人のDSトレーニング(脳トレ)」の考案者である、東北大学、川島隆太教授との共同研究により、脳科学理論に基づいた認知症の予防と改善に効果のある学習療法を開発し、「脳の健康教室」として事業化している。この研究では、「54÷(0.51-0.19)」のような難しい計算よりも、「3+4」などの簡単な計算をしている時のほうが、脳の前頭前野は血流が増えて活性化することがわかっている。


※「脳の健康教室」使われる教材

脳の健康教室は、高齢者を対象にした教室(定員20~30名)を週1回のペースで開き、脳の活性化を目的として開発された、読み書き・計算の教材を、ボランティアの学習サポーターと共に解いていく。教材は「頭の体操」として、高齢者が楽しく学習できるように工夫されており、同じ教室の参加者とのコミュニケーションを通した仲間作りにも役立っている。


この教室は行政に採用される件数が増えており、教室主催者の50%以上は地方自治体(市区町村)となっている。教室の運営は、地域の公民館や高齢者施設などを会場として、高齢者が無料で参加できるようにしているケースと、月額2,500円程度の月謝制にしているケースがある。1教室あたりの参加定員は20~30名として、教室リーダー1名と、受講者2名につき1名の学習サポーター人員が必要になる。教室の採算は、学習サポーターへの謝礼を払うか、無償ボランティアとして参加してもらうかによっても違ってくるが、公的な介護予防事業として教室の運営予算を捻出している自治体もある。

公文では、教室主催者に対して学習療法の研修教育と独自教材の提供を行い、初期導入費として10万円、教室の実施料として、受講者1人あたり約2,000円/回を徴収する収益体系を築いている。脳の健康教室は、民間のデイケアセンターなどが新サービスとして取り入れることも可能で、公式サイトの中では、教室運営にかかる費用と月次収支のシミュレーションもできるようになっている。

公文学習療法センター「脳の健康教室」

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