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著作権料で稼ぐカメラマンと 肖像権を売るモデルビジネス |
written in 2007/9/23
日本でプロとして活躍するカメラマンの数は約2万人といわれるが、彼らの平均年収は3百万円台と、一般サラリーマンよりも低い。しかし有名カメラマンの中では年収1億円を超える人達も存在している。年収3百万円と1億円のカメラマンの違いはどこにあるのだろうか?もちろんそこには技量や才能の差もあるだろうが、収益構造の面でみると著作権収入があるか無いかの違いで大きく分かれている。
わかりやすい話として、話題の有名女優がヌード写真集を発売すると数十万部の売り上げが見込まれるが、その中から印税としてモデルになった女優に対しては6〜10%、カメラマンには3%前後が支払われているのが普通だ。写真集の価格が1冊3千円として20万部が売れると、カメラマンの収入は1800万円ということになる。さらにその写真集がネットや携帯サイトの有料コンテンツとして二次的に販売されると、そこからも印税が支払われる。小説家は原稿を書くことで印税収入を得ているが、カメラマンの場合には自分が撮影した写真作品が“著作物”となってお金を稼いでくれるのだ。
しかしそれができるのは一部の著名カメラマンに限られていて、大方のカメラマンは月給制または日当制で働いている。一日につき1万5千円の日当として、月20日の仕事で30万円、年収で 360万円という計算になる。プロカメラマンの仕事は主に広告会社と結婚式場からのものが多いのだが、雇用や契約社員による仕事の形態では月々の固定給が保証されるものの、写真の著作権は会社側のものとなってしまうことが多いため、カメラマン側に二次的な収入が発生しない。
写真ばかりでなく、デザイナーの仕事にも同じようなことが言える。あるデザイナーが家電メーカーからの依頼で、Webサイトで新製品を紹介するための親近感が沸くキャラクターを制作してほしいという仕事を50万円で受注した。そのキャラクターをサイトに掲載したところ、若い消費者から人気となったために、サイト以外の広告物にも使われることになった。本来なら、このデザイナーは新たにキャラクターの使用料を受け取ることができるはずだが、そうはならなかった。最初の契約内容でキャラクターの著作権買い取り料までが50万円の中に含まれていたためだ。
このように著作権の所在によって収入に大きな違いが生じている例は数え切れないほどあるが、下請けの仕事だからといって、必ず著作権を放棄するということではない。大切なのは「作品の著作権を保有するのは誰なのか?」という取り決めを明確に交わすことで、それによって受注の単価にも違いが生じてくる。写真やデザインの世界ばかりでなく、これからの知的な作業を伴う仕事では「著作権で損をする人」と「著作権で得をする人」の格差は大きく開くことが共通した特徴といえるが、それを賢くアドバイスできる著作権のスペシャリストも新たな職業として注目されてきている。
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JNEWS LETTER 2007.9.23
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