コンセプトと読者層との関連性を考える

JNEWS会員配信日 1997/12/18

メールマガジンの運営を検討する場合には「無料購読制」にするか「有料購読制」にするかでコンテンツのコンセプトに大きく差が生じることは前回説明した。現在インターネット上に存在する国内メールマガジンの数は1200サービスを超えるがその98%以上は無料購読制によって運営されている。

しかしメールマガジン運営者の負担はかなり大きく、定期的な記事編集から配信登録者のアドレス管理、読者からのメールの返答と、配信部数が多くなればなるほど仕事量は増えていく。そしてメールマガジン運営の経費は広告収入が期待できる規模のサイトは良いとしても、大多数は「持ち出し」によって運営されているのが実態。

メールマガジンを成功させるためにはコンテンツのグレードを日々高めていく必要があるが、そのためには取材費、ライター執筆費等の運営予算も上昇させていく必要が生じてくる。ベンチャー企業の経営が軌道に乗り始めた段階で、従業員増強と設備投資のために売上高の上昇とは裏腹に資金繰りが悪化していく現象がよく見られるが、構造的にはメールマガジン運営にも同様のパターンがあてはまるのだ。

また読者数が増えた段階で広告掲載料が入るようになっても決して安楽の日々は訪れず、前述した記事編集、アドレス管理、メールの返答に加えて「広告スペースの営業」という新たな仕事が登場するために本業であるべき「コンテンツ編集」に対する集中力が劣ることにつながる。もちろん「コンテンツ編集部門」と「広告営業」を分業するだけの人員体制が確保されているのなら仕事はスムーズに流れるが、その場合には人件費が運営コストを圧迫させる。

安定した大口の広告スポンサーを確保できるまでの期間は無料メールマガジン運営者にとって「広告営業」が悩みの種になることは覚悟しておかなければならない。

読者を増やしたくないメールマガジンとは

一方の有料型メールマガジンでは、読者からの購読料金である程度安定した運営経費を賄えるために情報収集や取材にもコストをかけることができるようになり「広告営業」という仕事に時間を削られる心配もない。そのために「質」の面で無料型メールマガジンとは差別化されたコンテンツを提供することが可能となるわけだ。

また有料型の場合には「ターゲットとする読者層」と「購読料金」のさじ加減一つで無料型では運営が難しい「範囲を絞った深い情報」をビジネスにできることに注目しておきたい。

実はこの「範囲を絞った深い情報」を「商品」としてメールビジネスを成功させている業者が国内にも存している。しかしこのメールサービスはホームページを持つこともなく、会員読者を募集することもない。もっと端的に言えば「外部には知られたくない」「読者を増やしたくない」というコンセプトを貫いている。その商品となる深い情報とは「株式投資情報」だ。

周知の通り現在の株式市場は惨憺たるものだが、こんな市場でも儲けている人は確かに存在している。素人からは勘違いされがちだが株式相場とは平均株価が高い時のみ儲かるわけではない。景気が悪く株価が急落していく過程の大きな価格変動を利用して「空売り」をかける時が最も短期間で効率的に大きく稼げるものなのだ。(ただしプロ相場師の話)

そんな株価変動の激しい時代に投資銘柄情報を提供する某企業では1会員あたり月額5万円~10万円のメールサービスを実施している。月額料金に格差があるのは「情報提供のみ」「情報提供+相談可」の違いである。現在の総会員読者数は約100名でこれ以上の会員は募集をおこなっていない。ちなみに会員になる基準としては「会員としての秩序を守れること(情報を漏洩しない)」「最低1億円以上の投資資金を所有していること」が条件となっている。

情報の質とは

この某投資情報企業では「何人の会員で一つの情報を共有するのか」という視点を大切にしている。株式投資の世界では情報の成果が「利益・損失」という数字で直ぐに反映されるために会員側も情報の評価が非常にシビアになる傾向が強い。

株式投資では一企業の株価変動で数億から数十億円の資金移動があると言われている。つまりA社の株価が暴落して10億円損した人がいる裏側でも、その株を「空売り」していれば10億円儲けることが可能なのだ。
(手数料等を考えないものとして)

この一つの情報(10億円)を会員100人で共有すれば1人あたりの情報価値は1000万円(10億円÷100人=1000万円)ということになる。これを5倍の500人で共有するならば200万円(10億円÷500人=200万円)にしかならない。

同じ情報であっても会員数(読者数)によってその「質」が大きく変動することが良く理解できるはずだ。

差別化・質・運営形態

某投資情報企業の例は特別としても、メールマガジンを運営するに当たり「差別化・質」という視点から攻めるならば断然、有料購読制を目指すべきであるし、その方が生き残り策としても有望。読者数を意識するばかりに「誰にでも受け入れられるコンテンツ」になることは、急増する他のメールマガジンとの差別化のみならず、雑誌・、新聞などの既存媒体との差別化も難しく、「インターネットでなければ味わえない魅力」を引き出すことに苦労するはずだ。

「わかる人だけ読めばいい」的に強気なメールマガジンが増えてもそろそろ良い時期だ。料金が高い代わりに読者数を制限して「真の情報」を提供することもインターネットというメディアならば実現可能なのである。

※今回の某投資情報企業では外部からの問い合わせは受け付けていない都合上、社名、メールアドレス等の詳細情報については「非公開」としていますことをご了承下さい。

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