広告収入型と有料購読制メールマガジンの違いとは

JNEWS会員配信日 1997/11/29

電子メール新聞という媒体が急成長している。2年前には指で数えられる程度しか存在しなかったサービスが現在で把握できないほどの数に増加しているのだ。電子メール新聞の中にはインプレス、毎日新聞といった大手新聞社・出版社系が発行しているサービスの知名度が高いが97年以降、大きな影響力を持ち始めているのが個人や小規模ベンチャー達が運営しているサービス群(ベンチャー系電子新聞)だ。

様々な電子メール新聞の購読登録をおこなえるサイト「インターネットの本屋さん『まぐまぐ』)には現在1200誌を超える電子メール新聞が登録されていることからも、この市場の急成長ぶりには目を見張るものがある。

しかしその急成長ぶりとは裏腹に「電子新聞発行は本当にビジネスとして成立するのか?」という声があちこちで囁かれている。実際に1200誌もの電子新聞のほとんどは無料発行を続け、新聞内に掲載する広告による収入を期待している形態がほとんど。

しかし現実に広告収入によって電子新聞発行がビジネスとして成立しているケースは極めて少ない。推測ではあるが運営にかかる人件費を含めての収支が黒字になっている電子新聞は全体の1%程度ではないだろうか。

JNEWS LETTERもこれらベンチャー系電子新聞の中に含まれるわけだが、JNEWSでは運営方法の主流となっている広告収入方式ではなく読者のご理解をいただき有料購読方式にて運営を続けている。96年5月にJNEWS LETTERを創刊し約1年間の無料配信をおこない97年6月に有料化へと移行し、97年11月時点での有料読者数は2000名を超えた地点だ。

決して大きな規模とは言えないが、JNEWSの主張に賛同してくださる読者に支えられながら着実にビジネスネットワークとしての効果は高まりつつあり、JNEWSの情報取材能力についても創刊当初に比べてかなり豊富になっている。

そこでJNEWS LETTER創刊から有料制へと移行していく中で自らが経験したことについての報告をしながら、メール・ビジネス全体の将来的な方向性と可能性を考えてみたい。

なぜJNEWS LETTERは広告収入型でないのか

「ビジネス情報」という信頼性の高さを求められるカテゴリーでのサービスにおいてスポンサー収入による運営には大きなリスクが伴っている。広告掲載を依頼してくる企業は購読者に対してビジネスを仕掛けるのが目的となるが、ここで掲載にあたり広告案件の選別が大きな課題となる。

例えばマルチ商法的なネットワークビジネスを展開する企業にとってJNEWSのようなビジネスネットワークは格好の標的となる可能性も高く、その様な意図が潜んでいる広告案件を見抜く作業が必要となるが、これが大変手間のかかる作業。

もっとあからさま例ではフランチャイズチェーン本部による加盟店獲得のための露骨な提案も多い。「FCチェーンの効果的紹介記事を書いてもらえるならば、その謝礼としての掲載料金を支払う。そして読者からのレスポンスにより加盟店が獲得できれば、加盟金の何割かをバックしてもいい。」といった内容だが、そんな話を聞くだけでもうんざりである。

大手新聞社の広告契約と記事掲載とのバーター取引にも共通していることだが、広告掲載料に依存したメディアには「広告」と「情報」との境界線が希薄になっていく傾向が強い。編集側としては大口の広告料金を支払ってくれるお得意さま企業に対して、同社のイメージダウンになるような客観的記事を書けるわけもなく、それが読者にとって「信頼性の低い情報」になってしまうのだ。

一般的に紙媒体の雑誌出版では購読料金と広告掲載料との売上げウエイトを50:50に設定するのが理想的とされている。これは雑誌を出版するには取材、編集といった作業の他に、印刷、製本にかかるコストまた「書店側の返品自由」という大きなリスクが存在している事に理由がある。

しかし幸いにして電子メール新聞には印刷、製本、返品にかかるコストは一切かからない。その分を差し引いて考えれば「広告掲載のみによる運営」「購読料のみによる運営」が十分に可能となるが、JNEWSとしては情報の信頼性を高めるために「購読料による運営」の道を選んだ。

料金設定の方法

有料購読制の道を選んだ後に検討すべき大きな課題が「購読料金の設定」である。無料ならば気軽に登録してくれるが、いざ料金を支払うとなると読者がどんな反応をするのかが全く読めない。

最初の試算としてJNEWS LETTERの有料化1年経過時点での目標読者数を1000名と設定した。この算出根拠は最低1000名のビジネスネットワークが構築できれば、その中には各業界のスペシャリストが集まるために読者間のジョイントビジネスなど新ビジネスの構築が可能になると考えたためだ。「真剣にビジネスに取り組もうとしている1000人が集まれば何かが変えられる。」まずそれが最初の出発点。

次にJNEWS LETTER発行のための年間経費の計算に入った。経費の中で最もコストがかさむのが取材費と取材をするための人件費。質の高い情報を集めようとすれば、それに応じた各業界内での根回し(情報ブレーンの確保)が必要になるがこの部分はケチるわけにはいかない。あとは交通費、電話代、Web運営のためのコスト等を合算して、目標とする1000人の読者数を分母として割れば一人当たりの購読料金が算出できるはずだ。

このような方法で当初JNEWSが割り出した購読料金は一人月額1000円。つまり年間1200万円の予算が組めればなんとか年間を通してJNEWS LETTER発行に力を注ぐことができると考えた。

ここまではJNEWSが勝手に考えた試算結果である。しかしこの案に読者が賛同してくれなければ有料化の実現はできない。そこで客観的な意見を聞くため読者全員に対して電子メールアンケートを実施することにした。97年1月21日のことである。

その時の質問概要は以下の通り

  1. あなたは今までに読んだJNEWS LETTERの内容をどう思いますか。
  2. 月額1000円の料金体系をどう思いますか。
  3. あなたは有料読者になりますか。
  4. 「ならない」と答えた人はその理由を教えて下さい。

電子メールによるアンケートの回収率は非常に良く、当時の無料読者数3000名に対して1200通程度の回答が1週間で返信された。インターネットを活用しない通常のアンケート企画ならば、回答者に対するプレゼント特典をつけても回収率10%程度と言われているから、電子メールアンケートの将来性を実感すると同時に、その有料化に向けての「読者からの声」の思わぬ結果に対して、その後、更に有料化コンセプトの枠組みを修正しなければならない状況へと突入することになった。

JNEWSでは、電子メールを媒体としたニューズレター(JNEWS LETTER)での有料による情報提供をメインの活動としています。 JNEWSが発信する情報を深く知りたい人のために2週間の無料お試し登録を用意していますので下のフォームからお申し込みください。

JNEWS LETTER 2週間無料体験購読

配信先メールアドレス

※Gmail、Yahooメール、スマホアドレスの登録も可
 
Page top icon