JNEWS会員配信日 2015/6/22
日本食は世界的にも高く評価されて、寿司をはじめとする日本料理店は欧米でも人気が高い。その日本食文化にとって欠かせないのが「魚」である。魚介類には、カルシウム、ミネラル、DHAやEPAなどの栄養素が多く含まれており、それが日本人の長寿にも繋がっている。
しかし、日本人の魚の摂取量は年々減っている。国民栄養調査によると、魚介類の1日あたり摂取量は、2003年に95.3gだったのが、2013年には78.8gにまで減少。
これは、日本人が魚を嫌いになったということではなく、新鮮で美味しい魚が、入手しにくくなったことも関係している。
日本の漁業生産高は、1980年代をピークにして、現在は1/3にまで減少しているのだ。
漁業生産高が減少している理由は、国際漁業規制により、日本の漁船が 200海里水域から撤退したことや、多くの魚が餌としているマイワシが急速に減少していること、漁師の高齢化、燃料代の高騰などが複合的に絡んでいる。
それに伴い、日本国内で消費する水産物の4割は輸入品に依存している状況。しかし、これには大きく二つの問題点がある。
一つは、世界各国でも健康志向の高まりから、魚の需要が増えて、国際間の取引相場が高騰していることだ。日本人が好きな、マグロ、サケ、カニなどの輸入価格をみても、10年前の2倍近くにまで上昇している。
もう一つは、安全性の問題である。魚は鮮度を求められる食材であることから、流通経路は短いほど良いが、もともと魚を生で食べる習慣の無い他国では、船上や卸市場での温度管理が徹底されていない。それに対して、日本近海で獲れた魚は、高度な冷凍冷蔵技術によるコールドチェーンが保たれていて、日本の鮮魚は世界一の品質だ。
養殖魚についても、海外では、魚を育てるエサの中に、遺伝子組み換え飼料が使われていたり、添加物によって魚の成長を促進させることが行われている。また、中国からの輸入水産物が増えていることも、不安に拍車をかけている。
こうした問題点から、日本人の食生活を守る上でも、日本国内の漁業を再生することが重要であり、水産ビジネスの業界構造を変革しようとする、新興企業や起業家の登場が求められている。この業界は、長らくローテクのまま維持されていることから、視点によっては新ビジネスの芽をたくさん見つけることができる。
日本の漁業を排他的なものにしてきた仕組みとして「漁業権」がある。プロの漁師として自立するには、漁場毎に設定されている漁業権を取得しなくてはいけない。これは、限りある水産資源の乱獲を防ぐ目的で、都道府県が発行する漁業免許のようなものと考えてよい。
漁業権は申請すれば誰でも取得できるものではなく、地元の紹介者を介して漁業組合に所属して、年間で決められた回数を超すだけの漁に出るなどの実績を積まなくてはいけない。そのため、よそ者が漁業権を取得することは難しく、漁師の仕事は実質的に「親から子」への世襲制となっていた。
しかし近年では、漁師の高齢化が進行して、農水省の統計では65歳以上の漁師が36.9%(平成24年)を占めるようになった。各漁協では、後継者不足の深刻な悩みに直面していることから、世襲にこだわらずに、外部からも「脱サラをして漁師になりたい人材」を受け入れる動きが出てきている。
国も支援の姿勢を見せており、新規の漁師志望者を募集したり、漁師の技術を習得させる活動に対して補助金を出している。(この内容はJNEWS会員レポートの一部です)
■JNEWS会員レポートの主な項目
●脱サラしてプロ漁師になるための方法
●なぜ日本の漁師は低所得なのか?収益構造の分析
●高収益化を目指す漁師の産直ビジネス
●鮮魚流通を変える産直プラットフォーム
●国産水産物を海外に輸出する未開拓市場
●中国消費者向けの越境EC市場の参入点
●安全野菜を求める消費者から支持される生鮮品宅配の採算
●世界の食料不足に備えたアーバンファーム(都市農業)
●家庭菜園を進化させた自給型農業の普及と支援ビジネスモデル
●安全な野菜を産直販売するコミュニティ農業(CSA)の台頭
■この記事の完全レポート
・JNEWS LETTER 2015.6.22
※アクセスには正式登録後のID、PASSWORDが必要です。
※JNEWS会員のPASSWORD確認はこちらへ
|