自己破産者の中で高学歴者の占める割合が上昇している。それは高学歴者ほど、弁護士などの力を借りて債務から逃れる知識やノウハウを得たり、レバレッジの高いビジネスや投資を行っていることが原因で、高知能社会におけるモラルハザードが起こっている。 (JNEWSについて
高知能社会が引き起こすモラルハザードと無借金経営への回帰

JNEWS
JNEWS会員配信日 2010/9/1

 貸金業の基本は、低利で調達した資金を、それよりも高い金利で融資することで利鞘を稼ぐことだが、このビジネスを成立させる、もう一つの重要な要件は「貸出先との信頼関係」である。つまり“この人は、貸したお金を必ず返してくれる”という信用の元に、貸し手と借り手の取引は成り立っているのだ。

ところが最近では、様々な現場で代金の未払いや延滞のトラブルが深刻化している。身近なところでも、通販の購入代金、クレジットカード、住宅ローン、学校の給食費、病院の入院費、学生時代の奨学金などで延滞者が目立つようになってきた。

奨学金を例にすると、日本学生支援機構(旧日本育英会)に返還義務がある人は262万人いるのに対して、滞納者は 33万人(12.5%)、金額ベースでは貸金残高が3,983億円のうち、797億円(20.0%)が不良債権化しており、「学費を借りて卒業後に返済する」という奨学金のシステムが事実上崩壊している。

延滞の理由としては、学校を卒業しても就職が決まらずに経済的に厳しいことを挙げている人が多いが、統計上では、400万円以上の年収があり、経済的な余裕ができても、延滞が解消されない傾向が強い。学歴別にみると、高学歴になるほど、高年収でも返済しない人の割合が高くなり、ある意味では、知能犯型の延滞者が増えていることを示している。

《学歴別、奨学金延滞者に占める高年収者の割合》

こうした延滞者の増加は、貸し手(日本学生支援機構)との間で、人間的な信頼関係が希薄になっていることも関係している。簡単な手続きだけで奨学金の申請ができると、借り手は貸し手と顔を合わせずにお金を借りられるため、“約束は守らなくてはいけない”という、人としての常識が麻痺してしまうのかもしれない。

米国でもエリート層を中心に延滞率が上昇している。クレジットカード、住宅ローンはいずれも延滞率が8~10%という水準で、およそ10人に1人が返済を怠っているという状況。その背後では、借り手(債務者)の指南役となるコンサルタントや弁護士が、合法的に債務を逃れるための知恵を授けていることも影響している。

米国の住宅ローンは、買い値よりも資産価値が下がった家を、銀行に手渡せば債務が免除されるノンリコース型が主流であるし、自己破産をしても 500万~1000万円程度の資産は没収の対象にはならず、当面の生活に困ることはない。もちろん、新たなローンやクレジットカードが使えなくなるといったダメージはあるが、事業や投資に失敗して数億円の借金を抱えたまま苦しむよりも、破産を宣言して出直したほうが精神的には楽だ。

そのため、米国で 年間160万人を超える自己破産者の中でも、1万ドル以上の高所得者は多数含まれている。また、同程度の負債を抱えている人の中でも、高学歴者ほど自己破産をする割合が高いと言われている。そこからわかるのは、世の中が高度に情報化、知能化していくほど、人間関係や信頼関係のモラル崩壊は起きやすいということだ。

《自己破産申請数の推移(日本)》

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