個人のIoTネットワークで形成する気象観測ビジネス
ゲリラ豪雨などの異常気象を迅速に予測するには、世界各地にできるだけ多くの気象観測所を設置する必要がある。しかし、それを国の予算だけで行うのは難しいため、官民の協力によって行おうとするプロジェクトが立ち上がっている。
民間の気象予報会社、The Weather Companyの子会社「Weather Underground(WU)」では「パーソナルウェザーステーション(PWS)」という、個人でも設置可能な気象観測所の普及を推進するプロジェクトを2001年から立ち上げており、現在では、世界で25万ヶ所以上のネットワークに成長している。
パーソナルウェザーステーション(PWS)は、気温、湿度、降雨量、風速などが観測できる小型の観測機器を一般家庭に設置してもらい、そこから計測されるデータをクラウドに集約してデータ分析することで、世界各地の詳しい天気予測を実現させている。
PWSのネットワークに参加するのに必要な機材は、WU社の推奨製品が公開されており、150~300ドルの予算でアマゾンなどのECサイトから購入できる。その中にあるDavis Instruments社の「VantageVue」は、気温、湿度、風向、風速、雨量、気圧のセンサーがオールインワンで組み込まれているウェザーステーションで、本体とWi-Fiで通信されるコンソール画面上には、各種の観測データをリアルタイムで表示される。同じデータは、WU社のクラウドサーバーにも送信されて、AIによる気象分析が行われている。
パーソナルウェザーステーション(PWS)を設置する個人に対しては、謝礼や報酬が支払われるわけではないが、自費で機材を購入してPWSのネットワークに参加することのメリットは、テレビやラジオよりも詳しい気象情報をリアルタイムで把握して、共有されている各地点の気象データ分析から、突発的な気象変化を素早く知ることができる。そのため、同ネットワークには、農業や漁業関係者も参加するようになってきている。
■Personal Weather Station Network(WU)
WU社自体のビジネスは、25万ヶ所以上のパーソナル気象観測所から収集、分析された詳しい気象情報を、航空会社や鉄道会社などに15分サイクルで更新される高精度な天気予報として販売している。WU社の母体であるThe Weather Company(TWC)は、2016年にIBMが買収しており、人工知能「Watson」のプラットフォームと統合させた「Deep Thunder」という気象予報サービスが展開されている。この気象予報では、0.3kmから1.9km四方の超ローカルな天気予報を、農業、電力、保険、医療、小売業などの企業クライアント毎にカスタマイズして提供することができる。それに伴い、日本IBMでも気象庁の定める気象予報業務の許可を2017年に取得している。
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