東京オリンピックを契機に、日本でもボランティア活動への参加意識は高まっているが、継続的な活動への参加を促すためには、金銭とは異なる有意義な報酬制度やインセンティブのプログラムを整備することが必要になっている(JNEWSについて
ボランティア人材を活用したビジネスと報酬インセンティブ

JNEWS
JNEWS会員配信日 2018/12/4

 2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックでは、会場の案内、競技運営のサポート、大会関係者の移動サポート(運転)など、合計10分野で11万人ものボランティアが必要になる。その募集は、2018年9月末から開始されたが約3ヶ月で定員を超す応募者が集まっている。

ボランティア参加者は、大会期間中と、その前後で10日以上の活動ができることが条件だが、報酬は無償で、1日あたり1,000円の交通費が支払われるのみ。遠方からの参加者に対しても、交通費が上乗せになったり、宿泊費が支払われたりすることも無い。それでも、ボランティア希望者が集まるのは、特別なイベントに運営側の立場で参加して、感動を共有したいという想いや、自分の得意なスキルを役立てたい、世界から集まる人達との交流を通して、人生の経験値を高めたい等、それぞれの理由がある。

《東京オリンピック・ボランティアの募集内訳》

しかし、ボランティア人材の労力を無償で活用することには批判の声もある。近年のオリンピックは商業イベントとしての色合いが濃く、スポンサー企業からの協賛金やライセンス収入などで、約6,000億円の収入が見込まれている。その中で他の予算配分をやり繰りして、ボランティア人材への報酬を払うことは不可能ではない。


仮に、東京都の最低賃金で日当(7時間分)を払うと1人あたり約7,000円。1人10日間の活動で、8万人分の人件費は56億円になる計算だ。実際には、ボランティアと労働者の立場は異なるため、それよりも報酬額は低くして、金銭以外の特典やインセンティブを提供する方法もある。提供された労力に対しては、正当な報酬を支払う「有償ボランティア」とすることにより、仕事への責任感は高まり、接客サービスなどが向上する利点がある。

これは、オリンピックの運営に限った話ではなく、これから日本でも増えることが見込まれる、ボランティア人材を有効に活用するノウハウとして重要になる。
社会福祉協議会の調査によれば、国内で何らかのボランティア活動に参加している人の数は、1985年には280万人だったが、2015年には710万人に増加している。
働き方の価値観が多様化していることや、定年退職者の増加は、ボランティア人口を増やす要因になっている。

《国内ボランティア人口の推移》

ボランティア活動とビジネスとの距離感も近づいており、観光、医療、介護などの業界では、ボランティア人材に頼る業務は増えてきている。しかし、ボランティア人材のモチベーションを高めつつ、有効に活用するためのスキームについては確立しておらず、これからの整備を進めていく必要がある。ボランティアにも正当な報酬を払う「有償ボランティア」とすることで、不足している労力を補うことは、これからの方向性だが、金銭報酬だけで、彼らを動かすことはできない。

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・世界に広がるスキルベースボランティア
・公共交通サービスを再編成する配車アプリのビジネスモデル
・休日無制限制を導入するリモート企業のワークスタイル改革
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