各地で頻発する異常気象に対しては、数キロ単位の気象予測ができる超ローカルな気象観測のネットワークが必要になり、それを安価なIoTデバイスによって行うビジネスが成長している(JNEWSについて)
異常気象に向けたビジネス商機とIoT気象観測ネットワーク

JNEWS
JNEWS会員配信日 2018/10/24

 近年の異常気象は日本に限ったことではなく、世界各地で記録的な猛暑、豪雨、干ばつなどの被害をもたらしている。国連によると、最近20年間の気候変動による世界の経済損失は2兆2,200億ドル(約244兆円)にもなり、地震による損失額を上回っている。その中でも、日本は米国、中国に次いで世界で3番目に損失額が大きい。

《自然災害別の損失額(1998~2017年)》

《国別の経済損失額(1998~2017年)》
 ※出所:国連(UNISDR)

異常気象による自然災害は、経済大国ほど損失額は大きくなる傾向があるが、その一方で、企業に新たなビジネスチャンスをもたらしている。たとえば、農業生産者は気候変動に対応した、新たな農法を開発していく必要があり、その中で殺虫剤、除草剤、除菌剤などの需要が伸びている。また、気象の異変を事前に予測して、作物の被害を最小限に食い止められるテクノロジーの開発も求められている。



また、製造業では水不足への対策が急務の課題になっている。異常気象によって森林がダメージを受けると、これまで利用してきた水源が細ることになるため工場は操業ができなくなるリスクがある。そのため、新たな水源を確保しようとする「水紛争」が世界各地で起きており、水源が豊かな土地を買収することが、新たな投資にもなっている。

《水利用の内訳(世界)》

さらに、地球温暖化対策に適応した建物は「グリーンコンストラクション」と呼ばれて、オフィスビルやマンションには省エネ性能、耐熱性能の向上が求められている。大都市でのCO2排出量は、自動車を中心とした交通部門よりも、建築物からのほうが多く、全体の7割を占めている。そこで行政は、新築の建物に加えて、既存の建築物に対しても、環境性能の格付制度を導入する形で、CO2の削減を推進しようとしている。そうした制度が普及すれば、格付けランクの低いビルは、入居率の低下や資産価値の下落に直結するため、一気にグリーン改修の市場が伸びるとみられている。

《東京都の部門別CO2排出量》

近年の気象変化は、様々な業界に影響を与えており、そこからビジネスの新たなトレンドやチャンスを掴むことができる。特に気象ビジネスの根幹となる、気象データについては、これまでは国が気象機関によって観測されてきたが、最近では安価なIoTデバイスで各種のデータを収集し、それをAI分析によって付加価値の高い気象情報として配信することも可能になってきている。製造業や小売業では、より精密な天気予報を入手することで、異常気象のリスクを軽減したり、新たな集客にも役立てることができるため、今後は多様な気象予測ビジネスが成り立つようになる。


※IoT気象ステーション「Windfinder weather station

ゲリラ豪雨などの異常気象を迅速に予測するには、世界各地にできるだけ多くの気象観測所を設置する必要がある。しかし、それを国の予算だけで行うのは難しいため、それをIoTセンサーのネットワークを構築して行おうとするプロジェクトが立ち上がっている。

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・気象条件で商品構成を変えるパーソナライゼーション
・サプライチェーン向け気象リスク分析サービスの仕組み
・小型ドローンによる気象データ観測ビジネス
・格安スーパーコンピュータによる気象分析の手法
・クラウド技術が起こす天気予報革命の方向性
・ロボット社会で価値を高める職業とスペシャリストの方向性
・空の規制緩和で浮上するドローンビジネスの参入方法

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