熱狂顧客と形成するファンダムビジネスの開発
JNEWS会員配信日 2018/1/12
消費市場全体からみた売上は決して大きくないにしても、熱烈なファンが存在し続けることで、ニッチなマーケットが成立しているカテゴリーは多方面から掘り起こすことができる。
たとえば、熱心な鉄道ファンは、日本国内に100~200万人いるとみられている。
プロ野球のファン人口が約2,700万人、サッカー日本代表のファンが約3,000万人と推定されるのと比較すれば小さな市場だ。しかし、鉄道ファンは、鉄道車両の構造や形式に詳しい「車両鉄」、鉄道写真を撮ることに熱心な「撮り鉄」、全国すべての路線に乗ることを目指している「乗り鉄」などに分類されて、それぞれに深い行動特性がある。
さらに最近では、廃止になる路線の最終運行日に大勢のファンが集まることが「葬儀鉄」として流行っている。ただし、できるだけ良いポイントで写真を撮るための場所取りや、ファンが騒ぐことが近隣の迷惑になるとして、社会的な問題にもなっている。
鉄道会社にとっても、鉄道ファンが多く集まることには感謝しつつも、直接的な収益には結びつかないことから、当日の交通整理や警備などにかけられるコストは限定的なものになっている。しかし、鉄道ファンの盛り上がりを新たなビジネスに繋げたいという気持ちはある。
近年では、鉄道に限らず、多様な趣味や嗜好の分野で、熱心なファン同士がコミュニティを形成しはじめて、自主的に商品の啓蒙活動をしたり、廃盤商品を復活させる活動をしはじめている。こうしたファンが形成するコミュニティは、海外で「ファンダム(fandom)」と呼ばれており、新たなサブカルチャーのスタイルを形成している。
《ファンダムが形成されやすいカテゴリー例》
○鉄道
○スポーツ
○自動車、バイク
○映画作品やテレビドラマ
○アニメやマンガ
○小説(SFや推理小説が多い)
○テレビゲーム、オンラインゲーム
○俳優や音楽アーティスト
○ファッション
世界で最も古いファンダムの活動は、1887年に英国でシリーズ化された、架空の私立探偵が活躍する推理小説「シャーロック・ホームズ」と言われている。シリーズ最後の物語で、主人公のホームズは、犯罪者と共に謎の死を遂げる結末になっている。しかし、読者からはホームズが生きていることを望む声が殺到して、ファンの中からは、様々な解釈の二次創作物が生み出されている。
それらの二次創作物は「ファンフィクション」と呼ばれて、原作者から正式な許諾を受けていないものの、シャーロック・ホームズの名を後世に残すことに大きく貢献している。シャーロック・ホームズの熱烈なファンは「シャーロキアン(Sherlockian)」と呼ばれ、世界ではシャーロキアンが集まる団体が300以上運営されている。日本でも、1977年に「日本シャーロック・ホームズ・クラブ」が設立され、現在でも活動は続いている。そのメンバーからはプロの文筆家も多数生まれている。
※英国ロンドンにあるシャーロック・ホームズ像
現代ではネットの普及により、多様な分野でファンが自発的に運営するコミュニティ(ファンダム)が形成されるようになっている。ファンから支持される製品のメーカーや作品の原作者は、そうしたファンの活動に対して、どのような立ち位置で関わり、新たなビジネスを育ててくのかが課題になっている。
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■JNEWS会員レポートの主な項目
・ファンダムから生まれる二次創作物の影響力
・旧車フォードマスタング再生のビジネスモデル
・ファンと投資家の連携によるポラロイドカメラ再生
・パトロンファンドを活用したクリエイターの創作ビジネス
・ファン特典を与える音楽アーティストの新たな収益モデル
・YouTubeチャンネルを起点としたファンコミュニティの形成
・オタク文化とファンコミュニティの融合ビジネス
・投資対象として取引される音楽著作権の二次売買オークション
・音楽アーティストとリアル店舗を融合させる事業モデル
・感動をウリにする第5次ビジネスの正体と消費者の欲求願望
■この記事の完全レポート
・JNEWS LETTER 2018.1.12
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