JNEWS会員配信日 2016/5/16
東京−名古屋−大阪の区間は、訪日旅行客向けの「ゴールデンルート」と呼ばれている。日本の空港(成田、羽田、 関西、静岡など)を降りた訪日観光者が移動する定番のルートとなっているためである。そのため、ゴールデンルートの途中にあるホテルでは、恒常的な稼働率が80%を超えて、予約が取りにくい状況になっている。観光庁が発表している統計でも、外国人の宿泊者数は、最近の5年間で3倍以上に増えている。
《外国人延べ宿泊者数の推移》
・平成23年(2011年)……1,842万人
・平成24年(2012年)……2,631万人
・平成25年(2013年)……3,350万人
・平成26年(2014年)……4,482万人
・平成27年(2015年)……6,637万人
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※出所:宿泊旅行統計調査
宿泊客が増えることで、地域の経済にも好影響が期待されるが、実際に外国人客で好況な店舗は限定的である。ゴールデンルートの移動途中にある、地方の飲食店や小売店でも、爆食や爆買いの恩恵にはあずかっていない。これは、訪日団体ツアーの中では、食事や買い物をする店があらかじめ決められているためだ。
訪日旅行者の内訳は、中国人が最も多くて全体の25%以上を占めている。彼らの団体ツアーを取りまとめているのは、華僑系の旅行会社であり、日本国内の立ち寄り先も、華僑と繋がりの深い店舗に絞られている。
たとえば、秋葉原や銀座にある「ラオックス」の免税店には、団体ツアー客がバスを連ねて押し寄せているが、ラオックスは2009年に「蘇寧電器」という、中国で最大手の家電量販チェーンに買収されており、系列の旅行会社がラオックス店舗への送客を行っている。
中国では、格安の日本行き団体ツアーが多数企画されているが、その大半は日本国内の指定した店で、買い物や食事をさせることで、店からの送客マージンを旅行社が受け取る仕組みになっている。ツアーを引率する添乗員の人件費もマージンで賄われている。
ただし、こうした商慣習にも変化が起きてきている。中国人旅行者の中でも、格安ツアーへの参加は、結局は、割高な飲食代や買い物代金を払わされることに気付きはじめている。その反省から、2回目以降の日本旅行では、自分で行き先を決める“個人旅行”のスタイルが目立ち始めているのだ。
近頃では、中国内でも日本旅行についての詳しい知識をネットで調べられるようになり、日本の宿泊先や食事をするのはどこが良いのか、同じ商品を買うのでも、どの店が安いのか、などの情報が入手しやすくなっている。それに伴い、団体旅行のシェアが減り、個別手配の旅行が増えてくるとみられている。
《国籍別にみた日本旅行手配の方法》
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年間 旅行者 |
団体ツアー 参加 |
個人旅行 パッケージ |
個別手配 |
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中国 |
499.3万人 |
42.9% (17.2万円) |
14.6% (20.2万円) |
42.6% (30.0万円) |
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台湾 |
367.6万人 |
40.0% (6.1万円) |
16.5% (8.8万円) |
43.5% (14.3万円) |
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香港 |
154.2万人 |
15.4% (8.0万円) |
26.4% (10.5万円) |
58.2% (17.4万円) |
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韓国 |
400.2万人 |
16.1% (3.3万円) |
9.7% (4.0万円) |
74.2% (7.3万円) |
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米国 |
89.1万人 |
5.0% (9.2万円) |
2.8% (9.5万円) |
92.3% (16.4万円) |
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※カッコ内は、旅行期間中の支出金額(ツアー代金は含まない) ※出所:国土交通省観光庁 |
個別手配の旅行者は、団体ツアー客と比べると、日本文化の理解度が高くて、比較的マナーも良く、日本にとっての優良客となる可能性が大きい。彼らを上手に集客することが、国内の小売業や飲食業にとっての課題だが、華僑系を除けば、外国人対応ができている日本国内の事業者は、まだ少ないのが実態である。そこに向けた、集客支援のサービスは多様な切り口から開発していくことができる。(この内容はJNEWS会員レポートの一部です→記事一覧)
■JNEWS会員レポートの主な項目
●中国で共有される日本旅行とショッピングの知識
●中小旅館向け外国人客の集客支援
●中国旅行予約サイトからの集客モデル
●インバウンド観光情報サイトのビジネスモデル
●従業員向けインバウンド接客の教育市場
●多言語に対応するクラウド接客サービスの開発商機
●中国人旅行者を意識した民泊ビジネス
●米国不動産への遠隔投資と訪日外国人向けのインバウンド市場
●訪日外国人の増加に伴う医療コーディネーターと通訳者の役割
●15年後に切迫した労働人口激減と外国人就労者招聘マーケット
●日本の内需を引き上げるアジア旅行者の買い物意欲と購買特性
■この記事の完全レポート
・JNEWS LETTER 2016.5.16
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