シェアリング経済を先導するツールライブラリーとプロシューマー
紙の書籍は販売部数が年々低下して、13年連続のマイナスが続いている。雑誌と書籍を含めて、1996年には年間で2兆6千億円あった売上が、2014年には1兆6千億円にまで減少している。
書籍が売れなくなった理由としては、ネットやスマートフォンの普及により、紙の本を読まなくなったことが挙げられるが、読書への興味が完全に冷え切っているわけではない。本を購入する人が減るのと逆行して、図書館の利用者数は20年前と比べて 1.7倍に伸びている。全国の公立図書館が、個人向けに貸し出している本の数は、年間に約7億冊で、書店で販売される書籍の数(約6.4億冊)を上回っているのだ。
近年では、図書館のオンライン予約機能が便利になっているため、世間で話題になっている本を“借りて読む人”が増えており、ベストセラー本の予約待ちが100人以上付くことも珍しくない。それが「本の販売機会喪失」に繋がっていることは、出版社側も把握しており、公立図書館に対して新刊本の貸出を1年間猶予する要望を出している。
しかし、税金で運営される公立の図書館は、市民の利便性を高めることが求められており、意図的にサービスの質を落とすことも難しい。図書館の役割は、市民が必要とする情報・知識を、平等に入手できる場を提供することで、所得格差が開いている昨今では、逆に図書館サービスを向上させていく義務もある。
じつはそこに、シェアリング経済の先行きを占うヒントが隠れている。相互扶助の精神によりモノやサービスを共有して、人々の生活を豊かにするのがシェアリング経済の本質で、営利のビジネスとは相反する部分がある。
その点では、Uberのようなサービスは、個人(ドライバー)と個人(顧客)を結び付けるプラットフォームではあるが、Uberが料金の決定権を持ち、仲介に対して厚い手数料収入を徴収しているため、純粋なシェアリングサービスとは言えない面がある。これからの共有経済を牽引していくのは、もっと市民に近い立場のサービスになるはずだ。
米国の図書館では、書籍以外のデジタルコンテンツも貸し出しの対象とすることで、デジタルデバイド(情報格差)を埋めようとしている。さらに最近増えてきたのが、「Tool library(ツール・ライブラリー)」と呼ばれる、日曜大工や電子工作に必要な道具などを、無料で借りられるサービスである。
ホームセンターで売られているような電動工具は、一般家庭が毎日使うわけではないため、必要な時にだけ借りられれば十分だ。3Dプリンターのように高価な工作機械も、共同利用できるようにすることで、モノ作りに関心のある人を育て、製造分野の起業者を増やすことに役立つ。
こうしたシェアリングサービスと、営利のレンタルサービスは何が違うのか?シェアリング経済との親和性が高いビジネスモデルとは、どんな仕組みなのか掘り下げていくと、「プロシューマー」と呼ばれる新タイプの消費者がリーダー役となって、便利な共有サービスを次々と立ち上げてきていることがわかる。
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■JNEWS会員レポートの主な項目
・非営利で増えるツールライブラリーの役割
・遊休資産を共有できるレンタルプラットフォーム
・個人が立ち上げる多様なシェアリングサービス
・プロシュマーが築く新たな経済圏と商品開発の方向性
・企業が共有経済で生き残るビジネスモデルの再構築
・リース契約によるアパレルの販売モデル
・バッテリーをレンタルする電気自動車の販売モデル
・ゼロから独自商品を生み出す製品開発と地域工房ネットワーク
・ギグ・エコノミーで形成されるオンデマンドワークの功罪と影響
・消費者のリピート購入を促す日用品ブランド構築とボックス開発
・シェアリング経済で豊かに暮らすネオシェアラーへの成長過程
・お金を使わずに豊かな生活を追求する新ライフスタイルの台頭
■この記事の完全レポート
・JNEWS LETTER 2016.3.18
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